サッポロホールディングス(HD)の尾賀真城社長は25日、産経新聞のインタビューに応じ、HDが所管する北米の酒類事業について、2020年の早い段階で国内の酒類事業を中心とする事業会社のサッポロビール(ビール社)に移管する方針を明らかにした。人材がそろうビール社が国内外の酒類事業を統括することで、自社商品のブランド強化や物流効率の向上などの課題対応力を上げる狙いがある。
尾賀氏は「どの国で商品を作り(各国市場に)どう供給するかを考えるのは、事業会社で一気通貫にやる方が効率的だ」と述べた。同HDは海外のビール事業を統括していたサッポロインターナショナルを2018年末で廃止、19年から輸出販売とベトナム事業をビール社の所管に変更した。北米ビール市場での統括もHDから移管することで、ビール社が全世界での展開を統括する態勢が整う。
サッポロの北米事業は自社商品の「サッポロ プレミアム」のほか、事業買収で傘下に収めたカナダのビール3位のスリーマンを軸に展開。米国では17年、カナダでは今年、クラフトビールメーカーも買収した。自社商品は米国では18年まで32年連続でアジア系ビール1位を確保、「今年も前年比3~4%程度の成長になりそうだ」という。
ただ、米国で販売する自社商品のほとんどをスリーマンのカナダ4工場で製造しており、世界的な物流費上昇が利益を圧迫し始めている。このため、北米市場での成長には製造拠点の確保や物流網の構築といった課題解消が急務で、尾賀氏は「米国で1つか2つ、製造拠点か(ビールの)ブランドを(傘下に)収めたい。全体のバリューチェーンが整えば、おもしろい商売ができる」と期待を示す。
一方、サッポロHDは12年に、豊田通商と共同出資した米国の飲料会社について、収益性の悪化を理由に24日に売却を公表、米飲料市場からの撤退を決めた。今後、海外の主戦場である北米は酒類で展開することとなる。
アサヒグループHDのアサヒビール、キリンHDのキリンビールはともに国内酒類事業を担い、海外事業はHDが統括する態勢をとっている。