【リヤド=林修太郎】サウジアラビアの首都リヤドでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、現金に代わる決済手段「デジタル通貨」についても議題とした。世界第2の経済大国・中国は、米国の基軸通貨ドルに対抗する「デジタル人民元」の発行を計画。日本銀行と複数の欧州中銀も共同研究を始め、米国も独自に研究する構えだ。次世代のデジタル通貨をめぐり国際的な主導権争いが過熱してきた。
日本銀行の幹部は「“パンドラの箱”が開いた。通貨の在り方がどうあるべきか、根源的な議論を始める必要がある」と指摘する。
きっかけは昨年6月、米交流サイト大手フェイスブックが発表したデジタル通貨「リブラ」の発行構想。世界人口の3割超に当たる約27億人のユーザーを抱えたフェイスブックが、先端のIT技術を駆使して送金や決済などの金融サービスを安価に、しかも高い利便性で提供するという。自国民をリブラに奪われかねないという危機感が、各国の中銀をデジタル通貨の研究や発行の検討に動かした。
なかでも警戒されているのが、発行間近とみられる中国のデジタル人民元だ。米国と覇権を争う中国は、自国主導の決済システムを国際的に普及させようと総力を挙げる。米ドルを基軸とした国際通貨制度に頼らずに済めば、ドル覇権を背景に対立する国へ金融制裁を科す米国の圧力から逃れることができるからだ。