アメリカのセブン-イレブンが苦戦を強いられている中、「食」への注力で巻き返しを図っています。日本のコンビニエンスストアのノウハウを活かし、新たな戦略で成功を掴めるのでしょうか?本記事では、セブン-イレブン米国法人の取り組みと、アメリカにおけるコンビニ事情の現状について詳しく解説します。
新型店舗で「食」を強化
セブン-イレブン米国法人は、業績改善の切り札として「食」に力を入れた新型店舗の出店を加速させています。テキサス州ダラス近郊にオープンした新型店では、食品売り場を従来より3割も拡大。サンドイッチやサラダなど、新鮮で魅力的な商品が豊富に並んでいます。価格は5ドル前後で、テキサス風の味付けなど地域特性も考慮されています。
alt=セブン-イレブンの新型店舗の食品売り場。サンドイッチやサラダがずらりと並んでいる。
日本の弁当会社との協力体制も強化し、約30か所の国内工場で商品開発・製造を行っています。ダグ・ローゼンクランズ最高執行責任者(COO)は、「新鮮で付加価値の高い食品を毎日製造・配送している。日本との相乗効果は大きい」と自信を見せています。
アメリカコンビニの現状
しかし、アメリカのコンビニ事情は日本とは大きく異なります。アメリカではコンビニの約8割がガソリンスタンド(GS)に併設されており、「コンビニ=給油」というイメージが根強いのが現状です。都市部を除けば、コンビニは給油ついでに飲み物を買う場所という認識が多く、日本のように弁当やおにぎりなどを日常的に購入する人は少ないのです。
実際、セブン-イレブンやサークルKも、ガソリンスタンドでの収益が全体の6~7割を占めています。配車サービス運転手のアルファ・シセさん(32)も「給油のついでに飲み物を買うくらい」と語っており、食料品購入の場としての認識は低いようです。
競合他社の動向
他のコンビニチェーンも、この固定観念を変えようと試みています。テキサス州で人気のコンビニチェーン「バッキーズ」は、「清潔さ」を売りに、「アメリカで一番トイレがきれい」と謳っています。清潔な環境を提供することで、顧客満足度を高め、新たな顧客層の獲得を目指しているのです。
alt=清潔感のある「バッキーズ」の店内。広々とした空間で快適に買い物ができる。
セブン-イレブン米国法人も、2024年3~11月期の営業利益が前年同期比26%減と苦戦を強いられています。インフレの影響で、主な顧客層である中・低所得者の購買意欲が低下していることが原因とされています。
「食」への投資は成功するか?
セブン-イレブンは、新型店舗の出店を北米で約500店舗(全米店舗数の4%)に拡大する計画です。「食」への投資を強化することで、顧客のニーズに応え、業績回復を目指しています。日本のコンビニエンスストア文化をアメリカに根付かせることができるのか、今後の展開に注目が集まります。