石破茂首相は5月21日、「コメは買ったことがない」との失言で大炎上した江藤拓農林水産相(64)を更迭し、後任に小泉進次郎・前自民党選対委員長(44)を起用した。今国会の会期は残り約1カ月となっており、会期末政局の展開や7月20日投開票が見込まれる次期参議院選挙に大きな影響を与えることは確実だ。
石破内閣での閣僚更迭は初めてで、内閣支持率の低迷が続く石破政権にとって大きな打撃だ。その一方で、抜群の発信力を持つ小泉新農水相がコメ価格高騰に対する国民的な不満・批判の解消に向けて大胆な農協改革を断行し、成果を挙げれば、「政権を取り巻く環境は大きく改善する」(自民党長老)との指摘も少なくない。
政界関係者の間では「まさに、追い詰められた石破首相が、小泉氏という“劇薬”の投入で仕掛けた大博打」(閣僚経験者)と受け止める向きが多く、「成功すれば、参院選後の石破首相の続投につながる」(政治ジャーナリスト)との見方も広がる。
■野党の「農水相不信任決議案」で状況一変
今回の農水相更迭劇を振り返ると、「石破政権の右往左往ぶり」(与党幹部)が際立った。
江藤氏が佐賀市内での講演で「コメは買ったことがない。支援者がたくさんくださるので、(わが家には)売るほどある」などと、コメ価格高騰に苦しむ国民を愚弄するような発言をしたのは5月18日。これに対して、石破首相は「農政の継続性重視」などの理由から、厳重注意のうえで江藤氏の続投を決めた。
しかし、19日の江藤氏の記者会見や国会答弁での「上から目線の釈明」を踏まえて、当初は更迭には慎重だった国民民主党も含めた野党5党が「農水相不信任決議案の提出」で合意したことで状況が一変。慌てた石破首相は、「江藤氏の自発的な辞任申し出を受理」という形での更迭を余儀なくされた。
関係者によると、江藤氏の農水相辞任と小泉氏の後任起用は、20日深夜に石破首相と森山裕幹事長ら自民党執行部の協議で固まり、21日朝の江藤氏の辞表提出・受理→小泉氏の後任起用は「事前に決めた手順どおりに進んだ」とされる。