やる気が出ない時の科学的対処法:精神科医に聞く「心の疲労サイン」と回復術

やる気が出ず、疲れた様子で机に向かう人物やる気が出ず、疲れた様子で机に向かう人物

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やらなければいけないことがあるのに、どうしても体が動かない、何も手につかない。そんな「やる気が出ない」状態が続き、「このままではいけない」と自分を責めてしまい、ますます落ち込んでしまう。このようなストレスフルな状況に悩む現代人は少なくありません。本記事では、精神科医であり禅僧でもある川野泰周氏が、『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』の内容を交えながら、やる気が出ない状態のサインと、そこから抜け出すための具体的な方法について解説します。

「やる気が出ない」は心の疲労サイン:まずは自分をケアする

「やる気が出ない」と感じるとき、それは体が休息を求めているサインかもしれません。川野氏はまず、この状態を「自分がクタクタになっていること」に気づく機会と捉えることの重要性を指摘します。そして、次に必要となるのが、自分自身に優しさを向ける「セルフコンパッション」の実践です。

日々の忙しさに追われ、無理を重ねている人は、意識的に休息の時間を確保することが不可欠です。休息を後回しにせず、疲れた自分を受け入れ、ねぎらうことから始めましょう。

休息しても回復しない時の「心の勢い」の重要性

十分な休息を取ったはずなのに、あるいは休日を過ごしてもなお、やる気や活力が戻ってこないというケースも多く見られます。特に長期休暇明けの五月病のような状態や、気温や環境の変化で自律神経のバランスを崩し、無気力感が長引くという悩みは少なくありません。

このような、休息だけでは改善しない persistent な無気力感に対して、川野氏が解決の鍵として挙げるのが「モメンタム」、すなわち「心の勢い」です。停滞した心の状態を打破し、再び動き出すための推進力となるのがこの心の勢いを取り戻すことです。

疲れた心を再起動させる具体的な行動:感謝と感情の活用

では、心の勢いを取り戻すためには具体的にどのような行動を取れば良いのでしょうか。『瞬間ストレスリセット』で紹介されているように、自分の心をポジティブな方向へ少しでも動かすような「ちょっとした行動」が効果的です。

例えば、「感謝できることを探す」という習慣は、日常の中にある小さな幸せに目を向けさせ、心の状態を良い方向に変えるきっかけになります。また、「感情の高まる動画を観る」など、意図的に喜怒哀楽の感情を動かすことも、膠着して動きを忘れてしまった心に良い意味での「揺さぶり」を与えることにつながります。こうした小さな行動から心のエネルギーを再活性化させることが、無気力感を乗り越える第一歩となります。

目標設定と「初心にかえる」:再び動き出すための強力なアプローチ

心の勢いを取り戻すためのもう一つの強力なアプローチとして、川野氏は本書でも触れられている「人生の目的を追求する」という方法を推奨しています。これは「目標設定のワーク」として、マインドフルネス瞑想と組み合わせて実践されることもあります。

大きな目標だけでなく、日々の小さな目標でも構いません。目標に向かって努力する過程で、本来の自分が「何をやりたかったのか」、その活動を始めた「初心」は何だったのかを思い出すことが非常に重要になります。

初心を思い出す力:キラキラした心を取り戻す

私たちは、かつて「こんな人になりたい」「こんな素晴らしい仕事をしたい」といった希望や夢を持って、仕事を選んだり、趣味を始めたりしました。しかし、日々の業務や生活に追われるうちに、その原点や活動を始めた動機、つまり「初心」を忘れてしまいがちです。

初心を改めて思い出し、自分が何に情熱を感じていたのか、どんな理想を持っていたのかを再確認する作業は、停滞した心の状態を打破する大きな力となります。あの頃の「キラキラした自分の心」が蘇り、再び「もう少し頑張ってみよう」という前向きな気持ちが生まれてくることがあるのです。

まとめ:無気力からの脱却と心の回復

やる気が出ない状態は、単なる怠けではなく、多くの場合「心の疲労サイン」です。まずはそのサインに気づき、自分に優しくする「セルフコンパッション」を実践し、意識的な休息を取ることが大切です。それでも無気力が続く場合は、「モメンタム(心の勢い)」を取り戻すための行動が必要です。感謝できることを見つけたり、感情を動かすような小さな行動から始め、停滞した心を揺り動かしましょう。さらに、目標設定を通じて「初心にかえる」ことは、活動の原動力を再発見し、再び前向きに動き出すための強力なアプローチとなります。心のサインを見逃さず、適切な対処法を実践することで、無気力感を乗り越え、心の活力を取り戻すことができるでしょう。


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