大衆居酒屋チェーンの「鳥貴族」「串カツ田中」「新時代」で、ボリューム満点の「盛りすぎ串」が人気を集めている。中でも鳥貴族は、価格改定後の客足が注目される中、限定メニューが記録的なヒットとなり、既存店売上が大幅に伸長するなど好調な推移を見せている。
串カツ田中の無限ニンニクホルモン串
値上げ断行後も客足遠のかず 鳥貴族の好調要因
鳥貴族は、均一価格を370円から390円に値上げした5月1日に、限定メニュー「串ナゲットグリーン」を投入した。1皿・1杯ほぼ400円という価格帯になり、「鳥貴族は大衆居酒屋でない」「高くて行けない」といった不満の声も一部で聞かれたが、5月の既存店売上高は前年同月比111.0%、既存店客数107.1%、既存店客単価103.6%と、好調な実績を示した。値上げ前の4月と比較しても、既存店売上高105.3%、既存店客数104.6%、既存店客単価100.6%から、5月は全ての指標が上回る結果となった。
「串ナゲットグリーン」とスーパーエイト大倉氏の貢献
「串ナゲットグリーン」は、5月1日から100万食限定で、1皿390円で提供される。通常2本セットの串メニューに対し、アイドルグループ「スーパーエイト」にちなんだ8本盛りというボリュームとコストパフォーマンスの高さが特徴だ。これは、同じタイミングで発売された「ニラ玉グリーン」と共に、スーパーエイトの大倉忠義氏が監修した初のコラボレーションメニューである。ちなみに、緑は忠義氏のメンバーカラーに由来している。今回の鳥貴族の好業績には、忠義氏とのコラボレーションが大きく貢献したという声も多く聞かれる。
忠義氏は、鳥貴族を経営するエターナルホスピタリティグループ代表取締役社長CEOである大倉忠司氏の長男である。アイドル活動の傍ら、2024年7月にはタレントプロデュースやコンテンツ開発を手がける会社「J-pop Legacy」を設立し社長に就任するなど、起業家としての側面も持つ。タレントプロデュースでは、既にアイドルグループ「なにわ男子」などを手がけた実績がある。
盛りすぎ串トレンドを牽引する各社の戦略
鳥貴族の「串ナゲットグリーン」のヒットに加え、串カツ田中では期間限定で1本55円の「無限ニンニクホルモン串」を新名物として販売し、発売からわずか2週間で100万本、現在までに300万本を超える大ヒットとなっている。新時代では、1本55円の鶏皮串「伝串」が来店客のほぼ全員が注文する看板商品となり、3段6本や4段10本といったピラミッド盛りはSNS映えすることでも好評を博し、累計2億7000万本以上を販売している。
鳥貴族の最近の成功は、価格改定という逆風がありながらも、「盛りすぎ串」のようなインパクトのあるメニューと、スーパーエイト大倉忠義氏との効果的なコラボレーションが、新たな顧客層の獲得や既存顧客の満足度向上に繋がったことを示唆している。大衆居酒屋市場におけるトレンド創出とマーケティング戦略の成功例と言えるだろう。各社が趣向を凝らした「盛りすぎ串」は、今後も大衆居酒屋の集客において重要な鍵となりそうだ。