近年、日本の若者の間で奨学金の利用が増加しており、その返済が卒業後の人生設計、特に結婚にどのような影響を与えているのかが注目されています。多くの学生が学費を賄うために奨学金を利用する一方で、その後の返済負担が結婚へのハードルとなっているのではないかという懸念が高まっています。
例えば、私立大学院を卒業し、現在IT企業に勤める31歳の鈴木さん(既婚)は、500万円を超える奨学金を現在も返済中です。一昨年にお子さんが誕生し、家庭を築く中で返済は続いていますが、住宅ローン審査で困難に直面し、最終的には夫婦でのペアローンを選択せざるを得ませんでした。このように、結婚、出産、住宅購入といった重要なライフイベントと奨学金返済が重なる現実があります。
現在、大学生の約半数が奨学金を受給していると言われており、奨学金返済が若年層の結婚に現実的な影響を与えている可能性が指摘されています。しかし、これまでこの実態を示す具体的なデータは限られていました。そこで今回、日本最大級の奨学金情報サイト「ガクシー」と大手結婚相談所「パートナーエージェント」が協力し、奨学金と結婚・婚活に関する意識調査が実施されました。
奨学金返済負担が結婚に影響する現実を示唆する若いカップルの様子
調査結果:学生・保護者ともに高い懸念
この意識調査アンケートの結果から、興味深い傾向が見えてきました。まず、「奨学金返済があると結婚に悪影響を与えると思うか」という質問に対し、大学生・大学院生回答者の72.8%(「強く思う」30.3%、「ある程度思う」42.5%の合計)が「悪影響がある」と回答しました。
さらに、保護者世代に同じ質問をしたところ、86.8%(「強く思う」52.4%、「ある程度思う」34.4%の合計)が「悪影響がある」と考えていることが判明しました。この結果は、親世代の方が子供たちの奨学金問題と結婚について、より深刻に捉えている実態を示唆しています。
悪影響と考える具体的な理由
悪影響と考える理由としては、「借金であること自体が負担」「結婚相手やその家族に迷惑をかける」「相手方の親からの印象が悪くなるのではないか」といった経済的、精神的、そして社会的な側面からの懸念が多く挙げられました。
結婚適齢期と返済時期の重なり
日本では依然として男女ともに20代が初婚年齢のボリュームゾーンです。大学卒業後すぐの20代前半は、まさに奨学金の返済が本格化する時期と重なることが多く、この返済負担が結婚のタイミングや相手選びに影響を及ぼしている可能性が考えられます。専門学校生では結婚希望の割合が大学生より低いという結果も、こうした経済的な背景と無関係ではないかもしれません。
まとめ:奨学金は結婚の現実的な壁
今回の調査結果は、奨学金返済が単なる個人の借金問題にとどまらず、若者の重要なライフイベントである結婚に対して、学生本人だけでなくその保護者も深刻な懸念を抱いている現状を浮き彫りにしました。奨学金問題は、日本の少子化問題や若者の経済的自立とも密接に関わる社会的な課題として、今後さらに議論が必要となるでしょう。