参院選終盤の情勢:参政党の浸透が各地の戦況を揺るがす

今月20日に投開票を迎える参議院選挙は、公示後2度目の週末を終え、いよいよ終盤戦に突入した。各党が最後の追い込みをかける中、一部の選挙区では新興政党である参政党の存在感が増し、選挙構図に変化をもたらしている。従来の主要政党候補者らは、この新たな情勢に神経を尖らせながら、支持固めに必死になっている。

特に注目されているのが、参政党が掲げる「日本人ファースト」を前面に出した政策、例えば外国人流入や権利制限に関する保守色の強い主張だ。2020年結党と比較的新しい政党ながら、全国に287の支部を築き、組織的な活動を展開している。今年6月の東京都議選前に全国で展開された第二次世界大戦の特攻隊員を描いたポスターなどは、党の認知度向上に大きく貢献した。

参政党が選挙戦に投じる一石

参政党の代表である神谷宗幣氏は、各地で精力的に街頭演説を行い、多くの聴衆を集めている。福岡市での演説では、「陰謀論だ、差別だなどともう言われ慣れちゃった。我々はブレない。ぜひ皆さん協力してください」と強く訴え、集まった人々から大きな拍手が送られた。北九州市から駆けつけたという24歳の男性は、「日本人を大切にしてくれる政策を考えてくれている」と共感を示しており、党の主張が一定層の有権者に響いていることが伺える。

参政党候補者らは、党の認知度向上を背景に、各地で街頭に立ち支持を訴えている。その結果、これまでの選挙戦では見られなかった独自の支持層を開拓しつつあり、特に保守層を中心に票を伸ばしていると報じられている序盤情勢は、既存政党にとって無視できないものとなっている。

参院選終盤の情勢に影響を与える参政党本部参院選終盤の情勢に影響を与える参政党本部

福岡選挙区:参政党の台頭が戦況を変える

改選数3となった2016年以降、自民党、公明党、立憲民主党(旧民進党)が議席を分け合ってきた福岡選挙区では、今回の選挙で参政党新人の中田優子氏(35)が急速に支持を拡大していることが、各社の序盤情勢で伝えられている。昨秋の衆院選で伸長した国民民主党が加わり、3議席目を巡る争いが激化していたところに、参政党が割り込んできた形だ。

この状況に対し、各陣営は警戒を強めている。やはり上昇気流に乗る国民民主党は、新人の川元健一氏(45)を押し上げるため、代表の玉木雄一郎氏や幹事長の榛葉賀津也氏が相次いで福岡入りし、テコ入れを図っている。川元氏は玉木氏とのYouTube配信コラボで知名度向上を狙うなど、様々な手法を駆使している。陣営幹部は「昨秋の衆院選の終盤の感覚が今回は序盤から続いている」と手応えを語る。

一方、前回2022年選挙で3位通過だった公明党にとっては厳しい戦いを強いられている。同党の福岡選挙区における得票数は、16年約47万票、19年約40万票、22年約35万票と回を追うごとに減少傾向にある。支持母体である創価学会員の高齢化などによる組織力低下も指摘されており、現職の下野六太氏(61)陣営からは焦りの声も聞かれる。陣営は、自民党の小泉進次郎農相を応援に招き、自公の実績を強調するなど、徹底した組織戦を展開するため、党県本部所属の地方議員129人を総動員している。

熊本選挙区:保守王国の異変と参政党

自民党が昨秋の衆院選で県内全4小選挙区を制し、「保守王国」として知られる熊本県でも異変が起きている。改選数1の熊本選挙区では、自民党現職の馬場成志氏(60)が立憲民主党の新人に肉薄を許す厳しい情勢に置かれていることが、全国紙の世論調査で明らかになっている。

この熊本においても、参政党の動きが大きな影響を与えている。参政党新人の山口誠太郎氏(36)が急速に支持を広げており、参政党県連幹部は「保守王国だけに訴えが響いている」と手応えを語る。自民党の選対幹部は「特に夫婦別姓問題で党の煮え切らない態度に支援者の不満の声が強かった。どこまで参政に流れるのか」と、保守票の流出に危機感を募らせている。

自民党と参政党の間での保守票の奪い合いは、立憲民主党新人の鎌田聡氏(60)にとっては有利に働いている。5月にずれ込んだ出馬表明の遅れから一時は劣勢が伝えられたが、ここにきて急浮上する形となり、陣営は「追いつき追い越せが現実になってきた」と勢いづく。しかし、今後の情勢は依然として読み切れない部分も大きい。陣営幹部は「参政党が自民党票だけを削るならいいが、(県レベルで共闘する)国民民主党の票なども奪われている。最後まで全く予断を許さない」と気を引き締め、最後まで警戒を怠らない構えだ。

参政党の台頭は、福岡や熊本だけでなく、他の選挙区でも影響を及ぼしている可能性が指摘されている。選挙戦最終盤にかけて、各党がどのように参政党の浸透に対処し、自らの票を固めることができるかが、最終的な勝敗を分ける鍵となりそうだ。

◇福岡選挙区=改選数3 (届け出順)
冨永 正博47 諸新
中田 優子35 参新
村上 成俊54 諸新
野田 国義67 立現
川元 健一45 国新
下野 六太61 公現
伊藤 博文56 維新
森 健太郎47 保新
沖園 理恵50 れ新
那須 敬子65 社新
古川あおい34 諸新
松山 政司66 自現
山口 湧人35 共新

◇熊本選挙区=改選数1 (届け出順)
立花 勝樹57 諸新
馬場 成志60 自現
山口誠太郎36 参新
鎌田 聡60 立新

参考文献: