米民主党、トランプ氏の外交・関税政策を批判:同盟と対中競争力への影響

米国民主党は最近公開した報告書で、ドナルド・トランプ前大統領の外交および関税政策が、韓国など同盟国との関係を悪化させ、同時に中国との競争における米国の立場を弱体化させていると厳しく批判しました。上院外交委員会所属の民主党議員らによってまとめられたこの報告書は、トランプ政権下で米国の外交手段や国際的地位が損なわれ、同盟国との貿易摩擦や対外援助機関の廃止などが、結果として米国の対中競争力を大幅に低下させたと評価しています。

報告書が指摘する同盟と経済への影響

報告書は、トランプ氏の関税政策が米国の同盟国やパートナー諸国を、中国との経済協力を強化する方向へ傾かせたと指摘しています。具体例として、韓国・中国・日本の3カ国が3月ソウルで5年ぶりに経済通商トップ会議を開催し、協力を拡大することで合意した事例が挙げられています。さらに、報告書はインド太平洋地域の同盟国やパートナー諸国に対し、GDPの5%を国防予算に充てるよう要求しておきながら、米国の関税政策がこれらの国々の防衛費拡充を妨げているとの矛盾を突きました。一例として、韓国政府が米国の関税による経済的悪影響を緩和するため、今年4月に12兆2000億ウォン(約1兆3000億円)規模の補正予算案を編成した事実を挙げ、この金額が韓国の2022年国防予算の約20%に相当すると説明。これは関税が同盟国の国防力強化に必要な財政余力を削減しうるという分析を示しています。

トランプ政権下での米韓外交を示す写真:米民主党は同盟関係の悪化を批判トランプ政権下での米韓外交を示す写真:米民主党は同盟関係の悪化を批判

ハイテク、援助、広報政策への批判

また、報告書はトランプ氏が半導体法(CHIPS Act)に基づき米国内の半導体投資企業に提供される補助金を廃止しようと主張した点も問題視しました。この法律によって誘発された投資の多くが、韓国や台湾といった近しい同盟国企業によるものであるとし、法を廃止すれば中国に有利に働く可能性が高いと強調しています。対外援助についても、米国国際開発庁(USAID)の廃止など予算を大幅に削減したことで、中国との競争において米国が利用できる手段が失われたと指摘。現在、中国は40カ国以上で米国を抜いて最大の援助国となっています。さらに、中国が年間数十億ドルを対外宣伝や言論統制に費やす一方、トランプ政権がグローバルメディア局(USAGM)傘下のボイス・オブ・アメリカ(VOA)やラジオ・フリー・アジア(RFA)といった政府系メディア機関の廃止を試みた点も批判の対象となりました。

国際機構・人材政策への懸念と提言

世界保健機関(WHO)などの国際機構からの脱退も国益を損なう措置だと厳しく批判されています。加えて、米国の大学や留学生を狙った各種政策により、米国の優秀な人材流出の懸念が提起されていると分析しました。民主党幹事のジーン・シャヒーン上院議員は、「トランプ大統領が同盟国を攻撃し、米国の外交手段をなくし、敵対国を受け入れ、世界中から後退している間に、中国は影響力を構築し、関係を拡大し、世界秩序を自国に有利なように再編している」と述べ、強い危機感を示しました。このような状況を受け、報告書は議会が貿易政策に対する監督権限を回復し、トランプ氏の貿易摩擦を牽制する必要があると提言しています。また、議会が対外援助および広報機能を復元し、国連をはじめとする国際機構における米国の関与を拡大するために努力すべきだと強調しました。

報道機関の評価と結論

今回の報告書について、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、トランプ氏就任以降の過去6カ月間に蓄積された米国のソフトパワー弱体化に対し、民主党が初めて包括的な政治および政策レベルでの対応を示したものだと評価しています。NYTはまた、民主党がトランプ政権の政策が国家安全保障を脅かすとの批判を正当化するため、「中国との競争」という枠組みを活用している点にも注目しました。シャヒーン議員がNYTのインタビューで「民主党と共和党は一つのことについては同意している。それは、米国の経済と国家安全保障の未来にとって最大の脅威は中国との競争であるということだ」と語った通り、この報告書は米国内での対中認識が超党派的な問題意識となりつつある現状も浮き彫りにしています。報告書は、トランプ氏の政策が米国の世界的地位と同盟関係を損ない、結果的に増大する中国の影響力に対抗する米国の能力を低下させていると結論づけています。