紆余曲折を経て国民民主党と袂を分かち、無所属で一人奮闘する山尾志桜里氏(50)が、参議院選挙に立候補している。本人は「リベンジではない」とノーサイドの姿勢を表明しているものの、実際の街頭演説に足を運ぶと、一連の出来事が今もその戦いに大きな影を落としていることが伺える。
山尾志桜里氏が真剣な表情でカメラを見つめるポートレート写真
公認騒動の経緯と無所属出馬の背景
参院選公示日の翌日、伊豆大島の町役場前で山尾氏は、「政党同士の思惑とか、そういったしがらみから全く離れて、皆さんの暮らしのお困りごとの解決! 直接答えを作っていく!」と声を張り上げた。彼女が演説の最後で「政党のしがらみ」に言及した背景には、国民民主党との公認を巡る軋轢があることは衆目の一致するところだ。
政治部記者の話によれば、「山尾氏の不倫疑惑に関する記者会見が大炎上した後、国民民主党は即座に彼女の公認を取り消しました。山尾氏側は、誘っておきながら梯子を外された同党に怒り心頭で、執行部を批判するコメントと共に離党届を提出。今月1日に無所属での出馬を表明しました」。こうした経緯に加え、地盤のない東京選挙区からの立候補とあり、「玉砕覚悟」との見方が大勢を占めている。
街頭演説に見る「しがらみ」からの脱却
「玉砕覚悟」との見方にもかかわらず、大島を回った翌日の14時ごろ、池袋駅西口に山尾氏が街宣車の上に姿を現すと、聴衆はみるみるうちに100人ほどに膨れ上がった。30度を超える炎暑の中、まずマイクを握ったのは応援弁士として駆け付けた漫画家の小林よしのり氏(71)だ。「うええい!」という歓声に迎えられた小林氏は、「愛子様を天皇にしないことで政界が一致しているのは大問題」と述べ、山尾氏が掲げる女性天皇容認に賛同の意を示した。さらに公認取り消しに触れ、「そんな話があるか!」と国民民主党への怒りを露わにした。演説を終えた小林氏は、「ワシは『愛子天皇論』という本も出していて、同じ主張を堂々と述べている山尾さんが出るなら、応援せざるをえない。彼女ならやってくれるよ」と、暑さに喘ぎながらも山尾氏を鼓舞した。
小林氏のエールに勇気を得たのか、山尾氏の演説も熱を帯びた。「無所属になって正解でした。なぜなら政治家は政党の奴隷になったらおしまいだからです!」と冒頭で述べると、聴衆からも「そうだああ!」と喝采が起こった。
「女性にダメージ」──山尾氏の訴えと現実
その勢いのまま山尾氏は、「国民民主党では女性天皇の議論をしましょうと言ったら公認を取り消された」とこれまでの経緯について自身の見解を披瀝した。さらに熱を込めて、「『女性が政治を目指すとロクなことがない』。そんなメッセージで終わらせたくない。このままでは世界でリーダーを目指す女性にダメージを与えます!」と訴えた。
同性に向けて「再起できる」と強く訴えかける山尾氏だったが、熱心に聞き入る聴衆はあいにく男性ばかりであった。仮に女性がいたとしても、山尾氏のこれまでの行状を振り返れば、この言い分に首をかしげる向きもあるだろう。
山尾氏の「爽快な戦い」
街宣車から降り、猛烈な勢いで聴衆の間を駆け回る山尾氏に話しかけると、「私は爽快な、執念というのとは違う、すごく爽快な戦いにしたいと思っています。ふっきれましたから。ありがとうございます」と語った。記者が抱くもやもやにはお構いなし、といった様子で、彼女は嵐のようにその場を去っていった。
山尾氏の「ふっきれた」という言葉とは裏腹に、彼女の戦いは依然として過去の出来事と切り離せない状況にある。今回の参院選が、彼女にとって真に「しがらみを超えた爽快な戦い」となるのか、それとも過去の影を引きずる結果となるのか、その行方が注目される。
参照元:
「週刊新潮」2025年7月17日号 掲載 新潮社
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