トランプ米大統領の新たな対ロシア制裁方針は、国際社会に波紋を広げている。これが実行されれば、ロシア産原油の主要輸入国である中国とインドは、米国が課す「二次関税」(100%)の直撃を受け、経済に甚大な打撃が予想される。ロシアが50日以内にウクライナと停戦合意に応じなければ、米国は対ロシア取引国にこの関税を課す構えであり、その影響が懸念されている。
中国経済への計り知れない影響と米中摩擦の激化
トランプ米政権が二次関税に踏み切れば、ロシア最大の貿易相手国である中国への影響は甚大だ。中国外務省の林剣副報道局長は15日、「関税合戦に勝者はなく、圧力では解決できない」と米側を批判し、新たな貿易摩擦への警戒を示した。
ウクライナ侵攻後、中国はロシアの戦時経済を支える重要な存在となっている。習近平国家主席は同日、訪中したロシアのラブロフ外相と会談し、中露間の連携強化の重要性を改めて強調した。両国の緊密な関係は、国際社会、特に欧米諸国からの注目を集めている。
訪中したロシアのラブロフ外相と会談し握手する中国の習近平国家主席。中露関係の緊密化を象徴する一枚。
中国メディアの報道によると、2024年の中国のロシアからの輸入額は1293億ドル(約19兆円)に達し、2021年と比較して1.6倍に拡大している。この輸入の中心はエネルギー資源であり、ロシアは現在、中国にとって最大の原油供給国であり、天然ガスの主要な輸入元の一つとなっている。中国がロシアに支払うこれらの代金は、ロシアのウクライナ侵攻における巨額の戦費に充てられている構図だ。
一方で、習指導部は欧米による対露制裁に中国が巻き込まれる事態は望んでいない。王毅外相はEU高官に「ロシアがウクライナとの戦争に敗れる事態は見たくない」と伝えたと報じられたが、直接的な兵器供与疑惑は一貫して否定。トランプ氏の発言通り100%二次関税が発動すれば、既存の米中間の関税摩擦に加え、中国経済への打撃は必至であり、新たな火種となり得る。
中立路線を維持するインドの警戒と新たな圧力
ウクライナ侵攻を巡り、インドは一貫して中立的な立場を維持してきた。インドにとってロシアは長年の友好国であり、西側諸国の制裁によって値下がりしたロシア産原油を大量に購入し、自国の経済的利益につなげてきた経緯がある。
インドメディアの報告によると、2022年の侵攻前にはインドにおけるロシア産原油の輸入シェアはわずか1%程度だったが、現在では約40%にまで急増している。ロシアからの原油購入に対する国際社会からの批判に対して、インド政府は「世界のエネルギー価格の安定に貢献している」と説明し、その正当性を主張してきた。
しかし、米国からの新たな圧力に、インドは警戒感を強めている。米連邦議会では、ロシア産原油輸入国に500%の高関税を課す法案が検討中だ。インドのジャイシャンカル外相は2日、米側に懸念を伝え、中立性を保ちつつも制裁強化による経済影響を真剣に懸念している。
結論
トランプ氏の二次関税提唱は、実現すれば、ロシア産エネルギーに依存する中国とインドに深刻な経済的影響を及ぼす。両国は独自の利益に基づき関係維持を模索するが、米国の強硬姿勢は国際関係に緊張をもたらす。今後、関係各国の外交的駆け引きが世界秩序に与える影響が注目される。
参考文献
- AP通信
- 毎日新聞
- 香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト
- Yahoo!ニュース