橋下徹氏が斬る「不倫報道」:私生活の問題でキャリアを奪うのは「やりすぎ」か?

週刊誌を賑わせ、世論を二分する政治家や芸能人の「不倫報道」。プライベートな事柄でありながら、時に個人のキャリアを大きく左右するこの問題について、元大阪市長・大阪府知事で弁護士の橋下徹氏が、自身の見解を「日本ニュース24時間」に語った。事件性のない私生活の問題がなぜこれほどまでに社会的制裁を受けるのか、その背景と今後のあり方について深く掘り下げる。

弁護士・元大阪市長の橋下徹氏が不倫報道問題について見解を述べる様子弁護士・元大阪市長の橋下徹氏が不倫報道問題について見解を述べる様子

日本社会における「不倫報道」の現状と課題

橋下氏はまず、芸能人や政治家の不倫が週刊誌の「鉄板ネタ」であり、多くのメディアが詳細に報じることで、一度ターゲットとなると社会から逃れられない状況を指摘する。日本人が「不倫ネタ」を好む背景には、「倫理に反すること」という認識があるが、実際は「嫌悪感と好奇心」の問題だと分析する。現代の日本では、不倫(不貞行為)自体は犯罪行為ではない。発覚しても刑事事件にはならないが、配偶者は慰謝料を請求できる民事上の問題に過ぎない。にもかかわらず、多くの人々は「その人のキャリアを中断させるに値する罪」と見なし、過剰な反応を示しているのが現状だ。

メディアが報じる「不倫」の公共性と人権問題

メディアが他人の私生活に土足で踏み込んで報じる理由として、橋下氏は二つのポイントを挙げる。一つは「報道・表現の自由」であり、もう一つは「不倫報道をきっかけに、ハラスメントや政治家の金銭トラブルなどが明るみに出ることもあるから」という公益性である。

純粋な恋愛関係としての不倫も存在する一方で、不倫関係には女性(または男女どちらにも)に対する人権侵害につながる行為が伴いがちだ。例えば、暴力や恫喝の介在、性行為を拒否しにくい環境作り、既婚者であることを隠して独身だと偽る行為などがこれに当たる。これらは不倫自体は犯罪でなくとも、犯罪行為に匹敵する可能性があり、国民が「知る権利」を持つ場合や、報道が「チェック機能」として働く必要性も認められる。

過剰な「社会的制裁」への疑問:国内外の比較

しかし、橋下氏が最も問題視するのは、不倫報道後の「社会的バッシングの苛烈さ」だ。政治家は辞職に追い込まれ、芸能人はテレビ番組や広告の仕事を失う。「社会的死刑宣告」ともいえるこの状況は、罪と罰の均衡がとれていないと警鐘を鳴らす。レイプなどの犯罪行為が疑われる場合は厳しい制裁が当然だが、婚外恋愛の発覚だけで、その人の全キャリアが他者からの制裁によってキャンセルされるのは、行きすぎであり、世界でも稀な現象だという。

フランス政界の例を挙げ、ミッテラン大統領が夫人以外の女性との家庭を報じられても「それが何か?」と堂々と言い放ち、政治生命を絶たれることがなかった逸話を紹介。フランス国民は「不倫=辞職案件」とは捉えず、「私生活と職務能力」を別問題として考える。清廉潔白だが無能な政治家よりも、不倫をしていても有能な政治家を選ぶのが彼らの価値観だ。プライバシーの感覚も異なり、私生活は当事者間の問題であり、第三者が踏み込むべきではないという考えが根強い。

一方、アメリカのクリントン大統領のケースでは、「不適切な関係」が政治的ダメージを与えたが、これは実習生への態度振る舞いが大統領らしからぬものであったため、批判の対象となったと橋下氏は分析する。純粋な恋愛であれば、そこまでの批判は受けなかった可能性を示唆した。

玉木雄一郎氏のケースから見る新たな「モデルケース」

このような中、橋下氏が注目するのが国民民主党の玉木雄一郎代表のケースである。2024年11月に不倫疑惑が報じられた際、玉木氏は即座に会見を開き「おおむね事実」と認め、役職停止3カ月の処分は受けたものの、代表職は辞任しなかった。

橋下氏は、何かしらの事件性や家族からの異議申し立てがない限り、当事者間で解決済みの問題であれば、第三者がとやかく言うべきではないと主張する。玉木氏は当時「103万円の壁」の撤廃に熱意を持って取り組んでおり、その政治活動を評価した有権者は、不倫問題をことさら問題視せず、その後の参議院選挙で国民民主党は大躍進を遂げた。

不倫報道後の役職停止期間を終え、記者会見に臨む国民民主党の玉木雄一郎代表不倫報道後の役職停止期間を終え、記者会見に臨む国民民主党の玉木雄一郎代表

橋下氏は、本人が「不倫(婚外恋愛)」の事実を認め、相手方や家族からの異議申し立てがなく、仕事(選挙)において成果を出した、という玉木氏の「3つの条件」が、今後のモデルケースになるべきだと提言する。この考え方は男性に限らず、女性やLGBTQの当事者にも同様に適用されるべきであり、選択的夫婦別姓や多様な家族のあり方が議論される現代において、事件性のない私生活の部分が公的な仕事をキャンセルする理由に直結すべきではないと強調した。

まとめ:冷静な判断とポリシーある対応へ

芸能人の不倫についても同様で、企業や商品イメージへの影響から広告契約などがキャンセルされることが多いが、単なる婚外恋愛で当事者間の納得が得られているケースでは、テレビ局やスポンサー企業は「消費者からのクレーム」を先回りした「保身ファースト」を改め、ポリシーを持った冷静な判断をすべきだと橋下氏は訴える。

メディアで発言の機会を与えられている我々こそが、世間に対し、私生活と公的な役割を切り離して考えるべきであるという主張をしっかりと行っていくべきだ、と結んだ。

橋下徹氏 プロフィール

元大阪市長・元大阪府知事。1969年生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。著書多数。最新の著作は『政権変容論』(講談社)。