高市早苗総裁は10月14日の両院議員懇談会で、公明党の連立離脱について「私の不徳のいたすところだ」と反省を述べた。しかし、この連立解消は自民党内に大きな動揺と不満を広げている。長年の自公連立解消がもたらす影響は甚大であり、党内の本音と複雑な感情が露呈している状況だ。
公明党連立離脱が自民党にもたらす衝撃と深まる不満
自民党内で“高市執行部”への不満が高まっていることは否めない。10月11日、野村哲郎元農相(81)は鹿児島市内の会合で、「(新総裁が)高市氏でよかったのか悔やまれてならない」と述べ、公明党離脱の背景に「高市氏に対するアレルギーがあったのでは」「一度壊れたものは元には戻らない」と強い懸念を示した。自民党は1999年に公明党と連立を組んで以来、選挙での“公明票”と国会での過半数維持を基本戦略としてきたが、この26年間の積み重ねが突如として壊れた衝撃は大きい。
日経新聞は10月10日、次の衆院選で公明党の選挙協力がなければ、自民候補の約2割が落選する可能性があると報じた。少数与党の状態に加え、公明党の離反は国会での過半数確保に向けた多数派工作のハードルをさらに高める。この難局に際し、党内が一致結束すべきところだが、高市総裁への不満が噴出している。
高市早苗新総裁が両院議員懇談会で公明党連立離脱の経緯を説明する様子
高市総裁の「論功行賞」人事に対する党内批判
こうした困難な状況にもかかわらず、高市総裁の党役員人事に対する党内の不満は根深い。ある自民党ベテラン衆院議員は「あれだけ露骨な論功行賞で党役員人事をやられたら、ついていくのが馬鹿らしくなる」と厳しく批判している。総裁選で支援を受けた麻生太郎元総理を副総裁に起用し、その義弟である鈴木俊一元財務相を幹事長に据えたことは、派閥間のバランスを欠くと見られている。
さらに、コロナ禍での銀座クラブ通いで「銀座三兄弟」と称された松本純元国家公安委員長を副総裁特別補佐に起用したことは、特に批判の的となっている。松本氏は現職ではない上に、単に麻生氏の親友という理由での起用と見なされ、党内からは反発の声が上がっている。この人事により、小泉進次郎農相を支援したグループとの間に大きな「溝」が生じたとされ、その反省からか、小泉氏を防衛相、林芳正官房長官を総務相へ起用する案も報じられるなど、調整が図られている模様だ。
連立解消後に見え隠れする自民党内の複雑な感情
別の重要閣僚経験者は、公明党との関係再構築の必要性を強調しつつも、高市氏周辺に見られる「むしろ公明に出て行ってくれて清々している」という雰囲気に強い懸念を示している。本来であれば、公明党に土下座してでも関係を再構築すべき局面だが、連立離脱直後に自民党が公明候補のいる小選挙区に独自候補を擁立するという報道が出るなど、溝はさらに深まる兆候を見せている。
高市新総裁は、連立解消という未曾有の事態と、それに伴う党内の動揺や人事への批判といった複数の難題に直面している。政権運営の安定性だけでなく、今後の選挙戦略にも暗い影を落とす状況であり、党内の融和と国民からの信頼回復が喫緊の課題となっている。