高市早苗新政権は、共同通信の調査で64%、読売新聞で71%と高い支持率で好調な滑り出しを見せています。特に若年層や保守層からの支持回復が見られることから、早くも来春の衆院解散を予想する声も聞かれます。しかし、ジャーナリストの岩田明子氏は、この政権を「選挙のための内閣」ではなく「政策実現のための内閣」と位置づけ、その可能性を否定しています。秋の臨時国会では、ガソリン暫定税率の廃止や社会保障改革などが進む見通しであり、岩田氏も高市政権への期待をにじませています。
高市早苗新政権の始動を告げる所信表明演説
「働く内閣」を映し出す連立と組閣の妙技
高市早苗新政権で日本はどのように変わるのでしょうか。10月24日に行われた所信表明演説では、「責任ある積極財政」が強調され、財政規律を重視した前政権からの明確な路線転換が示されました。この演説は、2013年に安倍晋三元首相が「強い経済を取り戻す」と強調した演説に通じるものがあり、市場関係者の間で「サナエノミクス」への期待が高まるのも納得です。
そもそも、日本維新の会との連携は必然的なものでした。両者の関係は、自民党が野党だった2012年から始まり、安倍氏が第一次政権からの復活を模索していた際に、維新の松井一郎氏や橋下徹氏が「一緒に新党をつくろう」と働きかけたことがきっかけです。この「安倍新党」構想は幻に終わりましたが、菅義偉元首相や森山裕前幹事長らを窓口にして関係性が深まっていったことを考えると、高市氏と維新の吉村洋文代表が共鳴し合うのは自然な流れと言えるでしょう。
組閣人事も巧みにこなされたと評価できます。入念な「身体検査」が行われ、組閣当日の午前に一部の人事が変更されたことから、連立協議に追われる中でも慎重に検討された人事であったことが窺えます。特に、石破政権で経済再生担当大臣を務めた赤沢亮正氏を経産大臣に据えた人事は絶妙です。総裁選でともに争った面々を重要ポストに就けるだけでなく、石破元首相の右腕を重用することで「全員参加型内閣」を印象付けました。同時に、対トランプ関税交渉の継続性を持たせつつ、その交渉過程で決定した日本の80兆円対米投資の責任を赤沢氏に負わせるという戦略的な狙いも見られます。
政策実現への道:高市政権が直面する課題
しかし、高市政権には多くの課題も存在します。まず、少数与党であることには変わりありません。吉村氏が「公明党はブレーキ役だったが、維新はアクセル役」と述べていますが、野党の協力を得られなければ、政策の実現は困難です。秋の臨時国会では議員定数削減に向けた法案を提出し、成立を目指すとしていますが、これには時間がかかる見込みです。来夏に公表される国勢調査を踏まえ、野党と協議しながら進めるのが現実的でしょう。さらに、第二次安倍政権のように、首相を支える強固なチームを構築できるかどうかも、高市氏にとって重要な課題となります。
ただし、この政権が政策実現を最優先にする方針であることは間違いありません。支持率に一喜一憂し、解散の時期を探るようなことはないでしょう。その証拠に、連立合意文書は全8枚にも及ぶ分量で、自公連立政権時代の4倍にも詰め込まれた内容です。もちろん、その全てが実現するかは不確かですが、「働く内閣」となる予感は十分に感じられます。
参考文献
- 著者: 岩田明子 (いわたあきこ) ジャーナリスト
- 1996年NHK入局、2000年報道局政治部へ。20年にわたり安倍晋三元首相を取材し、「安倍氏を最も知る記者」として知られる。2023年にフリー転身後、『安倍晋三実録』(文藝春秋)を上梓。現在は母親の介護にも奮闘中。
- 出典: 日刊SPA! (Source link)





