村上誠一郎衆議院議員、73歳。衆院当選13回、勤続約40年の大ベテランであり、石破内閣では総務相として政権を支えた。一方で小選挙区・比例代表並立制を導入した選挙制度改革に最後まで反対し、2012年に自民党が政権に復帰した後も特定秘密保護法や安保関連法の採決に反対の声を上げるなど、長く「党内野党」と位置付けられてきた。総務相の交代式で涙を流した石破政権の振り返りから、高市政権への注文、そして進退まで――。村上議員に聞いた。
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■仕事を全うできた感謝の気持ちから…
――総務相としての最後の会見や退任あいさつでは、「民主主義と財政規律を守ることが我々に課された大きな責務」「国民を守り、助ける最後の砦はわが総務省しかない」と涙ながらに話し、話題になりました。どんな思いだったのでしょうか。
世界の情勢が100年前に戻りつつあるのではないかという危機感を持っています。今から100年ほど前にスペイン風邪がはやり、1929年から大恐慌があって、33年にナチス政権が生まれ、第二次世界大戦が39年に始まった。
現代に目を転じると、2020年に新型コロナウイルスの流行、22年にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、イスラエル・パレスチナ紛争も起きました。超大国はどこも自国第一主義に走り、世界の平和と安定を考えるリーダーがいなくなり、アメリカでは分断が起こり、極右も各国で台頭しています。
日本でも財政規律を無視した財政ポピュリズムがはやり、排外主義的な主張をする人が増えている。そんな時代に選挙制度や放送制度をつかさどる総務省は、国民にとって合理的な意思決定の基盤となる、民主主義を守る責務を持っています。地方財政を預かり、地方自治体と密にコミュニケーションを取る役所でもあるので、財政規律にも責任があります。
涙を流したのは「男泣き」でした。事務次官の御礼のあいさつを聞いていたら、込み上げてきました。私の基本姿勢から、自治体行財政や地方創生、放送関係、予算・国会対応から岩手県大船渡市・今治市などの林野火災まで語ってくれました。ここまで私の考えを理解してくれていたのかと……。総務省の皆さんに一丸となって支えていただいて、仕事を全うできた感謝の気持ちで涙が出たんです。






