高市早苗政権下の竹島問題:強まる韓国の実効支配と日本の対応

日本海に浮かぶ竹島を巡る日本と韓国の領土問題は、長年にわたり両国関係の緊張の種となってきた。特に高市早苗新首相の就任後、この問題への関心が再び高まっている。軍事ジャーナリストの宮田敦司氏が指摘するように、韓国による竹島の実効支配は年々強化されており、観光地としても年間20万人もの韓国人観光客が訪れる現実から目を背けることはできない。本稿では、高市政権下での竹島問題の現状と、日本が直面する課題について深く掘り下げていく。

日韓関係を揺るがす軍事協力中止の波紋

高市早苗首相は10月末に韓国で開催されたAPEC首脳会議に出席後、李在明大統領との日韓首脳会談を実現した。就任後初の会談は平穏に終わったものの、その裏で日韓間の軍事協力に関する大きな問題が発生していた。

11月上旬に予定されていた史上初の自衛隊基地での韓国空軍機への給油支援計画が中止されたのである。ドバイでの航空ショーに参加する韓国空軍のアクロバットチーム「ブラックイーグルス」が、那覇基地での給油を要請していたが、このチームが10月28日頃に竹島上空で訓練飛行を行っていたことが判明。日本政府はこれに抗議し、給油支援計画を中止した。結果として、ブラックイーグルスのドバイ派遣も取りやめとなった。

これに対抗する形で、韓国は11月13日から15日まで東京で開催される「自衛隊音楽まつり」への韓国軍楽隊の派遣を中止した。これは10年ぶりの参加となる予定だった。

高市首相は総裁選候補者討論イベントにおいて、毎年2月に島根県松江市で行われる「竹島の日」式典に閣僚が出席すべきだと主張し、「(韓国の)顔色をうかがう必要がない」とまで発言している。このことから、保守派の新首相に竹島問題の解決への強い期待が寄せられている。しかし、日本側が「竹島は我が国の領土」と主張する一方で、現実には韓国による実効支配が着実に進行している。

ツアー観光客で賑わう竹島の様子ツアー観光客で賑わう竹島の様子

韓国による竹島の実効支配の現状

日本ではあまり報道されないが、竹島における韓国の実効支配は非常に強固なものとなっている。現在、竹島には独島警備隊(警察官)20人、灯台職員3人、鬱陵(ウルルン)郡庁職員2人が常駐している。警備隊は慶尚北道警察庁所属の鬱陵警備隊の1個小隊が1カ月交代で勤務しており、韓国側はこれを「明白な大韓民国の領土」であることの証左としている。

実効支配の具体例として、以下の建造物と施設が竹島に存在している。

  • 警備隊宿舎: 地上3階建て、面積658平方メートル。1997年に増築され、常駐隊員の生活拠点となっている。
  • ヘリポート: 韓国警察庁が運用し、大型ヘリコプターが24時間発着可能。警察、消防、山林庁、軍が利用している。
  • 灯台: 1954年竣工、1998年に増築・有人化。職員3人が常駐し、灯塔の高さ15メートル、光達距離は25マイル。ディーゼル発電機と太陽光発電システムを完備している。
  • 接岸施設: 1997年竣工。最大500トン級の船舶1隻が接岸可能で、公船のほか、鬱陵島からの観光船が定期的に運航し、所要時間は1時間30分である。
  • 国会図書館独島分館: 2009年に警備隊宿舎内の会議室に設置。開館当初は300冊だった蔵書が、現在は国会図書館本館の電子図書80万冊以上を閲覧できるまでになっている。
  • 郵便ポスト: 2003年に警備隊宿舎横に設置され、郵便番号は「40240」。郵便物は警備隊交代時に鬱陵郵便局に手渡され発送される。
  • コンクリート製の太極旗: 1968年竣工。頂上付近の地面に設置されており、大きさは縦約1.8メートル、横約2.8メートル。
  • 民間人居住施設: 韓国外交部によると、竹島には現在、韓国人女性1人が居住しており、2011年に約3億円をかけて建設された施設に住んでいる。韓国政府は居住者の安定的な定着を積極的に支援している。
  • 通信環境: 島内では電話、インターネット、スマートフォンが使用可能。韓国の通信会社が通信施設を建設し、警備隊員、居住者、来訪客がインターネットサービスを利用できる。

これらの施設は、韓国が竹島を自国領として実効支配していることを明確に示している。

まとめと今後の展望

高市早苗新首相のリーダーシップの下、日本政府は竹島問題解決に向けてより積極的な姿勢を示すことが期待されている。しかし、韓国による竹島の実効支配は年々強化されており、その現実は無視できないほど盤石なものとなっている。軍事協力の中止といった外交上の摩擦が起きる中でも、韓国は竹島でのプレゼンスを強め続けている。

日本にとって、感情論に終始することなく、竹島における韓国の強固な実効支配という現実を直視し、国際法に基づいた冷静かつ戦略的な対応が求められる。この複雑な領土問題の解決には、粘り強い外交努力と、国民への正確な情報提供が不可欠となるだろう。


参考文献: