広尾学園が示す新たな教育潮流:海外大学合格実績から見る国際志向の育成

2025年、私立「広尾学園」の卒業生は、東京大学に18名、国公立大学全体で79名、医学部医学科に94名、早慶上智ICUに378名という目覚ましい国内大学合格実績を記録しました。しかし、同校にはさらに注目すべき「375名」という数字があります。これは同年の海外大学合格者数であり、広尾学園史上最多の記録を更新しました。国内の高校における海外大学合格者数ランキングでは、「インターエデュ」の発表によると断トツのトップを誇ります。この数字は延べ人数であり、実際の卒業生272名に対し、49名が海外大学を受験し、最終的に43名が進学しています。広尾学園の生徒がなぜこれほど海外大学を目指すのか、その背景には明確な学習目的と学校の教育方針があります。

驚異的な海外大学合格実績とその背景

広尾学園の生徒が海外大学を志望する主な理由は、「学びたい分野を最も追求できる、自分に合った環境を求めているから」だと、同校の植松久恵教頭は説明します。生徒たちは、単に海外を目指すのではなく、自身の学問的関心に最も合致する教育環境を選んでいます。国によっては複数の専攻を自由に組み合わせられる大学もあり、多様な学習意欲を持つ生徒にとって海外大学が魅力的な選択肢となっているのです。この375名という合格実績は、生徒たちが漠然とした目標ではなく、具体的な学びの目的を持っていることの証とも言えるでしょう。

東洋経済education × ICT 提供の広尾学園の教育風景東洋経済education × ICT 提供の広尾学園の教育風景

インターナショナルコースの設立と発展

広尾学園のルーツは、明治時代の自由民権運動指導者である板垣退助夫人・絹子らにより1918年に設立された「順心女学校」にさかのぼります。1973年には文部省(現文部科学省)の海外帰国子女教育研究指定校となり、国際教育の基礎を築きました。そして2007年に男女共学化し、「広尾学園中学校・高等学校」へと改称。この時、新たに中学と高校に設けられたのが「インターナショナルコース」でした。植松教頭は、「長年培ってきた帰国子女受け入れの経験を特色にしようという考えからでした」と語ります。

当初、インターナショナルコースの生徒数は10人以下と小規模でした。海外大学を目指すという明確な方針も確立されておらず、2010年の高校1期生の海外大学合格者数はゼロでした。しかし、2011年からは数名の合格者を出し始め、徐々に海外大学への進学実績を伸ばしていきました。この軌跡は、広尾学園が国際的な視野を持つ教育に力を入れ、生徒一人ひとりの「学びたい」という意欲を最大限に支援してきた結果と言えるでしょう。

まとめ

広尾学園の海外大学合格者数における圧倒的な実績は、単なる難関大学への合格実績を超え、生徒の主体的な学びと国際的な視野を育む同校の教育理念が結実したものです。明確な学習目標を持つ生徒たちが、最も適した教育環境を求めて海外へと羽ばたいている現状は、日本の教育における新たな潮流を示唆していると言えるでしょう。


[参考資料]
Yahoo!ニュース – 東洋経済education × ICT (2025年11月18日掲載記事)