韓国兵役制度とスターたちの選択:誠実な履行から兵役逃れまで

韓国では、男性に課せられる兵役義務が、国民としての重要な責務として広く認識されています。特に芸能界のスターたちにとっては、約2年間にわたる活動中断を意味し、その選択は常に世間の注目を集めてきました。模範的な兵役を終えて国民からの支持を高めるスターがいる一方で、兵役を逃れようとしたとして厳しい批判を浴び、キャリアに大きな影響を与えたケースも存在します。本記事では、韓国の兵役制度の概要と、スターたちが直面した兵役を巡る様々な局面、特に兵役逃れが発覚し世論を二分した事例に焦点を当てて解説します。

韓国の兵役制度:義務とその影響

韓国の兵役制度は、満18歳以上の男性を兵役検査対象者とし、満20歳から28歳の期間中に約2年間の入隊義務を課しています。これは、人気俳優やアイドルといった著名人も例外ではありません。近年、世界的に活躍するBTSの兵役免除を巡る議論は、韓国世論を大きく二分するほどの社会問題となりました。

約2年間もの芸能活動中断を余儀なくされる兵役は、多くのスターにとって避けたいものでしょう。しかし、その困難な義務を誠実に果たし、かえって国民からの株を上げたスターも少なくありません。例えば、人気絶頂期に軍隊内で最も訓練が厳しいとされる海兵隊に入隊し世間に衝撃を与えたヒョンビンや、北朝鮮と激しく対峙する最前線の部隊に配属されたことで知られるソン・ジュンギがいます。また、東方神起のユンホは陸軍で実技が優秀な兵士に与えられる「特級戦士」に選ばれ、キム・スヒョンは健康上の理由で社会服務要員(公的機関での勤務)となる予定だったものの、手術を受けて入隊し、さらに人気を博しました。

韓国の兵役制度について説明するイメージ写真韓国の兵役制度について説明するイメージ写真

一方で、健康上の問題で兵役途中での除隊を余儀なくされたケースもあります。ウォンビンは膝の十字靭帯損傷により約半年で除隊し、リハビリに専念しました。チャン・グンソクは双極性障害と診断され、社会服務要員としてソウルの消防災難本部に勤務しています。これらの事例は、兵役の重みと、それに伴う個人のキャリアや生活への影響を示しています。

世間の批判を浴びた兵役逃れ疑惑のスターたち

兵役義務は韓国国民にとって極めて重要であり、兵役逃れは社会的に厳しく非難されます。過去には、その道徳的な問題から、キャリアに深刻な打撃を受けたスターたちが存在します。

ソン・スンホン:尿検査不正操作の代償

「四季シリーズ」として知られるドラマ『秋の童話』(2000年)や『夏の香り』(2003年)に出演し、日本でも高い知名度を誇るソン・スンホンは、兵役逃れが発覚したスターとして必ず名前が挙がります。彼は個人病院で尿検査を受ける際、尿にタンパク質成分の薬物を混入させたり、尿道に注射で自分の血が混ざった液体を注入したりして、腎臓疾患と診断され兵役免除を画策しました。しかし、この不正が発覚し、結果として2004年から2006年まで入隊することとなりました。

俳優ソン・スンホンのポートレート写真俳優ソン・スンホンのポートレート写真

チャン・ヒョク:ブローカー利用で発覚

日本でも高い知名度を誇り、アクションや乗馬、殺陣を得意とする「時代劇のカリスマ」チャン・ヒョクも、兵役逃れを試みた一人です。彼は2000年に兵役検査で不合格となるよう、兵役ブローカーに報酬を払い腎臓疾患を装いました。2004年、ブローカーの逮捕によって不正行為が発覚。再検査を受けて同年11月に入隊しました。その後は、模範訓練兵としての表彰も受け、無事に除隊しています。

俳優チャン・ヒョクのポートレート写真俳優チャン・ヒョクのポートレート写真

ユ・スンジュン:国籍放棄による永久入国禁止

韓国系アメリカ人の歌手兼俳優ユ・スンジュンは、1990年代にトップクラスの人気と実力を誇っていました。しかし、2002年、入隊を目前にして突然韓国籍を放棄し米国市民権を取得することで兵役を逃れました。この行為に対し、韓国では批判が殺到し、同年、韓国政府はユ・スンジュンを永久入国禁止処分としました。その後、彼は中国やアメリカを中心に活動を続けていますが、現在に至るまで韓国に入国することはできません。

歌手兼俳優ユ・スンジュンのポートレート写真歌手兼俳優ユ・スンジュンのポートレート写真

結び

韓国の兵役制度は、国家の安全保障と国民の義務という側面から、非常に重い意味を持ちます。特に公の存在であるスターたちにとって、兵役に対する姿勢は、その後のキャリアや大衆からの評価を大きく左右する要因となります。誠実に義務を果たすことで称賛される一方で、兵役逃れを画策した場合には、深刻な社会的批判と法的な制裁を受けることになります。これらの事例は、兵役が単なる個人的な義務に留まらず、韓国社会全体における倫理観や国家への忠誠心と深く結びついていることを示していると言えるでしょう。

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