〈「人間、クズはクズのまま変われないと思う」少年院出所直後に21歳女性を包丁で殺害…被害者遺族からの“悲痛な本音”を知った加害者一族の“まさかの対応”とは〉 から続く
21歳の娘を少年院出所直後の15歳少年に殺された遺族、山本直子さん(仮名・50代)は、刑務所や少年院を通じて犯罪被害者、遺族の思いを担当刑務官、加害者に伝えられる「心情等伝達制度」の利用を決意。
はたして加害者からはどのような声が返ってきたのか。山本さんはそれをどう受け止めたのか。ここでは、ノンフィクション作家の藤井誠二氏による『 「殺された側」から「殺した側」へ、こころを伝えるということ 』(光文社新書)の一部を抜粋。やり取りの一端、そして山本さんが起こした損害賠償請求訴訟の行方を紹介する。(全4回の2回目/ 続きを読む )
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洪水のようにあふれ出す言葉
「心情等録取書」の内容に戻ろう。
内容は、加害者に直接質問をぶつけるものになっていく。おそらく言葉が洪水のようにあふれ出したのだろう。刑務官は、それを一滴残らず汲み上げたいという気持ちで文章化したはずだ。
〈 事件のことを覚えているのか。私たち家族、娘や私の友人等は今でも娘のことを思っている。自分が何をしたのか考えて実際に口に出しなさい。更生はできないかもしれないが、自身の犯した罪には向き合ってもらいたい。事件に関して私、娘の祖母、娘や私の友人が事件をどのように思っているか想像して欲しい。障害を抱えながら必死に生きている人もいるのだから、事件を起こしたことを、自分が抱えている障害のせいにしてはいけない。民事訴訟を起こしているが、そもそも金で解決できることではない。それくらい傷付いている。公判時と現在の気持ちに変化はあるか。必ず答えてほしい。加害者に自分の生い立ちから現在までの成長を振り返ってほしい。娘に包丁を向けたとき、実際に娘を刺したとき何を感じたか。必ず答えてほしい。 娘に抵抗されたとき、どのように思ったか。また、娘はどんな表情をしていて、どのような気持ちだったと思うか。必ず答えてほしい。 人の命をどのように思っているか、過去に「人を殺してみたい」と話していたようであるが、実際に殺してみてどのように思うか。必ず答えてほしい。私のこの話を、真正面から逃げずに向き合って。謝罪の意味を必ず考えてほしい。親からの愛情や友人との繋がりを感じた経験がないと、加害者のような人間性になると思うが、それでも加害者を許せない〉
心情等録取書の中に「事件を起こしたことを、自分が抱えている障害のせいにしてはいけない」とあるのは、公判のとき、弁護側から家庭環境について聞かれると、「親や兄弟とうまくいっていなかった」「喧嘩で兄に首を絞められた」と証言し、病院では「ADHD(発達障害の一種である注意欠如多動症と診断された)」などと加害少年が証言したことについて、山本が反論したものだ。






