あらゆる場における人とのリアルなつながりが薄れる中、近年「職場の孤独」が深刻な問題として注目されています。転職サービス「doda」などを運営するJob総研の最新調査では、驚くべきことに、働く人の約7割が職場で孤独を感じた経験があると回答しました。これはコロナ禍前と比較して大幅な増加であり、現代の職場環境が抱える課題を浮き彫りにしています。
デスクで仕事をする個々のオフィスワーカーたち。職場の孤独感、希薄化する人間関係、コロナ禍以降の働き方の変化を象徴。
調査データが示す「職場の孤独」の拡大
Job総研が5月に実施した調査の詳細を見ると、職場で孤独を感じた経験が「ある」と答えたのは69.2%に達しました。（「とてもある」18.2%、「ある」26.2%、「どちらかといえばある」24.8%）。
この傾向を時系列で見ると、コロナ禍前の2019年には19.8%だったのが、コロナ禍が始まった2020年には27.1%に増加。2022年までは3割前後で推移していましたが、5類移行後の2023年には36.1%へと一段と増加。そして2025年には67.2%と、過去7年間で最も高い割合となり、前年からの増加率も最大を記録しました。このデータは、コロナ禍以降、職場の人間関係が希薄化し、孤独感が急増している現状を明確に示しています。
孤独を感じた経験がある人々の属性では、年代別では50代が73.8%で最も高く、次いで40代、30代と続きます。男女別では男性が72.2%、女性が64.0%。役職別では主任クラスが80.7%と突出し、次いで課長クラス（72.1%）、一般社員クラス（67.0%）、部長クラス以上（64.1%）、係長クラス（63.5%）となっています。特に中間管理職、ベテラン層、男性に孤独を感じやすい傾向が見られます。
現場の声：50代公務員男性が語るリアル
では、「職場の孤独」は具体的にどのような状況で感じられるのでしょうか。都内に住む50代の公務員男性が、その内実を明かしてくれました。勤続38年、約20人の部下を率いる管理職となって十数年。職場の人間関係は大きく変化したと言います。
「管理職になった頃は、同年代の部下が多く、業務以外の車の話やプロ野球の話などで盛り上がれ、和気あいあいとした雰囲気でした。しかし、早期・希望退職などで同年代の部下はいなくなり、今は気軽に雑談できる相手が職場にいません。」
この男性が特に孤独を感じるのは、ランチ後の休憩時間や飲み会の場です。「20～30代の部下はスマホゲームや『パワプロ』の話題で盛り上がっていますが、私はゲームに全く興味がないので、輪の外で見ているだけ。40代の部下は無口で、会話が続きません。」手持ち無沙汰になり仮眠室で一人横になった際、「孤独だな」と強く感じるそうです。
まとめ：現代日本社会に広がる「職場の孤独」
Job総研の調査が示したデータと、50代公務員男性の具体的な体験談からは、「職場の孤独」がコロナ禍を経て深刻化し、多くの働く人々に影響を与えている現状が鮮明に浮かび上がります。特に中間管理職やベテラン層において、世代間のコミュニケーションの変化や職場のつながりの希薄化が、孤独感を増幅させている可能性があります。これは単なる個人的な感情に留まらず、現代日本社会における働き方や人間関係の変化を示す重要な兆候と言えます。
