米価高騰止まらず:備蓄米尽き、秋も高値維持へ 問われる改革

日本の食卓に欠かせないコメの価格高騰が続き、消費者の家計を圧迫している。JA福井県中央会の宮田幸一会長は、30年ぶりに上がった価格が維持されなければ農家は立ち行かないと危機感を示した。経済誌元編集長の小倉健一氏は、政府の備蓄米放出が限界に達し、秋以降も高値が続くと指摘している。この問題は単なる天候不順による需給バランスだけでなく、日本農業が長年抱える構造的な問題が背景にある。

コメ価格の現状と秋の見通し

現在、店頭での新米価格は5キログラムあたり4000円前後で推移しており、この水準が秋の収穫後も高止まりするとの見方が有力だ。コメ価格は消費者の悲鳴を置き去りにして高騰を続けている状況にある。

稲穂が実る日本の水田風景稲穂が実る日本の水田風景

政府の対応と備蓄米の限界

小泉進次郎農林水産大臣は、市場価格の沈静化を図るため、政府備蓄米を数度にわたり放出した。しかし、小倉氏によれば、この備蓄米という「最後の切り札」は、現在ほぼ使い果たされた状態にあるとされている。一時的な供給増による価格抑制は、もはや期待できない状況だ。

構造的な問題:日本農業の根深い病巣

今回の危機は、天候不順といった一時的な要因だけでなく、日本農業が長年抱えてきた構造的な病に起因する。政治家の票田への配慮や、巨大な農業団体による市場支配といった歪んだ構造が、30年以上にわたり日本の農業を徐々に弱体化させてきた。そして、この構造が消費者に対し、非合理な負担を強いる結果となっている。手詰まり感のある小泉農相に、この国の農業を再生させる覚悟と計画があるのかが問われている。

業界関係者の視点

コメ流通の現場を知る人物からの告発は、この問題の深刻さを浮き彫りにする。全国米穀販売事業共済協同組合理事長であり、卸売大手ヤマタネ会長でもある山﨑元裕氏は、現状を厳しく批判している。山﨑氏は、『日本経済の失われた30年間と同様、コメを巡る問題も何も変わってこなかった』と語り、食糧管理制度(食管法)廃止後も実質的にJA全農による管理(全農食管)が続いた実態を指摘した。そして、今コメ問題が顕在化したことを、業界が変わる『チャンス』と捉え、『このチャンスをわれわれが生かせるかが重要だ』と述べている(雑誌『財界』2024年6月25日号より)。

結論

コメ価格の高騰は、単なる需給バランスの問題ではなく、日本農業の長年の構造的課題が表面化した結果と言える。政府の備蓄米放出は一時的な措置に過ぎず、根本的な解決には至っていない。山﨑氏が指摘するように、今回の危機を機に、市場原理が働き、農家と消費者双方にとってより良い農業のあり方へと転換できるかが、今後の重要な焦点となる。小泉農相をはじめ、関係者には抜本的な改革への覚悟が求められている。

[出典]