ベンチャー採用、最も失敗する「価値観が合わない人」の特徴

書籍『ベンチャーの作法 -「結果がすべて」の世界で速さと成果を両取りする仕事術』は、多くの企業で採用や人材育成の参考にされています。この書籍には、1.1万人以上のキャリア相談や4000社以上の採用支援経験を持つ高野秀敏氏による、ベンチャー企業で求められる「結果を出す働き方」がまとめられています。popIn Aladdinやスイカゲームの開発で知られる起業家、程涛氏も本書に共感した一人です。程氏は、ベンチャー企業のリアルを知る立場から、『ベンチャーの作法』の内容に触れつつ、ベンチャー採用における重要な視点を語っています。

ベンチャー企業での成功には、個人の能力だけでなく「チーム戦」としての側面が非常に重要です。そのため、採用においては個々のスキル以上にチームワークが重視されます。この観点から見て、最も採用において危険とされるのが、「価値観が合わない人」です。

採用候補者を評価する際、「能力が高いか低いか」「価値観が合うか合わないか」の二つの軸で考えると、四つの象限に分けられます。議論の余地なく避けるべきは「能力が低く、価値観も合わない人」です。しかし、その次に避けたいのが「能力は高いが、価値観が合わない人」だと程氏は指摘します。

能力が高い人は一見すると優秀に見え、評価されやすい傾向にあります。しかし、その価値観が企業の文化やチームの目指す方向性と異なっている場合、会社全体のカルチャーを破壊してしまうリスクが高まります。こうしたタイプは、いわゆる「空気を悪くする天才」となり得ます。

ベンチャー企業の採用担当者たちが、候補者の能力や価値観を評価する会議の様子ベンチャー企業の採用担当者たちが、候補者の能力や価値観を評価する会議の様子

むしろ、「能力はそこそこでも、価値観が合う人」の方が、共に成長していく中で能力を伸ばす可能性を秘めています。理想は価値観も能力も高い人材ですが、それが難しい場合、次点として採用を検討すべきは「価値観が合う人」なのです。

「頭はいいが価値観がズレている人」は、時に正義感や合理性に基づいて行動しているつもりでも、結果的に経営層との対立を生んだり、社内で徒党を組んで組織の分断を引き起こしたりすることがあります。これは、単なる意見の相違ではなく、根本的な価値観のミスマッチに起因する問題です。

このため、ベンチャー企業の採用においては、スキルや知識といった表面的な能力だけでなく、「カルチャーフィット」、すなわち企業文化やチームの価値観との整合性を何よりも重視する必要があると程氏は強調します。

書籍『ベンチャーの作法』で「評論家タイプ」として描写されている人物像は、まさにこの価値観が合わない人の典型と言えます。口先では様々な意見を述べますが、実際には行動を伴わないタイプです。このような人物は、最初から採用候補から外すべきだと程氏は自身の経験から述べています。過去に価値観がミスマッチな人材を採用してしまった経験があり、その対応に非常に苦労したため、現在は採用プロセスにおいてカルチャーフィットを慎重に見極めるようになったとのことです。

結論として、ベンチャー採用を成功させる鍵は、候補者の高い能力だけに目を奪われるのではなく、企業の文化やチームの価値観に合致するかどうかを深く見極めることにあります。「能力は高いが価値観が合わない人」を採用することは、短期的な成果に繋がる可能性があったとしても、長期的には組織の健全性を損ない、成長を妨げる最大の要因となり得ます。採用担当者は、この点を強く意識し、見せかけの優秀さではなく、真にチームと協調し、共に文化を築いていける人材を見抜く力が求められます。

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