6月22日に投開票が行われた東京都議会議員選挙で、自民党は歴史的な大敗を喫した。この結果は、すぐさま迫る参議院選挙（7月20日投開票）に向け、党内の石破首相に対する不満を激化させている。こうした状況の中、一部では人気閣僚である小泉進次郎農水相の「首相化プラン」が、半ばやけっぱち気味に検討されているという。このプランは現実味を帯びるのだろうか？自民党内部の動きを取材した。
小泉進次郎氏「オートコール作戦」とは
東京都議選の投開票日を2日後に控えた6月20日午後、渋谷区内のある企業では、総務セクションの電話が鳴りやまなかった。受話器を取ると、流れてきたのは小泉進次郎農林水産大臣の録音音声だった。「農水大臣の小泉進次郎です。都議選ではぜひ、わが自民党候補への投票をお願いします」という内容だ。
この音声は、無差別にかけられているようだった。ある社員は「都議選ごときで現職大臣が録音とはいえ投票依頼してくるなんて、初めてではないか」と怪訝な表情を見せた。
都議会自民党の関係者によると、これは「進次郎オートコール作戦」と呼ばれ、備蓄米放出などで国民的人気のあった進次郎氏を前面に出し、都議選を有利に進めるために自民党幹事長室が仕掛けたものだという。当初は投票日前日の21日に流す予定だったが、都民ファーストが19日に小池百合子都知事の音声によるオートコールを始めたことを知り、急遽1日前倒しして実施したとされている。
都議選「過去最低」の惨敗：裏金問題が影響か
しかし、小泉氏の人気にあやかろうとしたこのオートコール作戦は、ほとんど効果がなかったようだ。投開票の結果、自民党が獲得した議席数は選挙前の30議席から21議席へと激減。都議会第1会派の座を失い、惨敗を喫した。これは、過去最低とされた2017年都議選の23議席をも下回る厳しい結果となった。
前出の都議会自民党関係者は肩を落とす。「今回の都議選には、パーティ券収入の不記載、いわゆる裏金問題に関与した議員が17人も立候補していた。都民の批判は根強く、厳しい選挙になると覚悟はしていたが、まさかここまで落ち込むとは」。開票速報を見守る都議会自民党本部は、まるでお通夜のような雰囲気だったという。
数字以上の深刻さ：自民党候補の「競り負け」
今回の惨敗の深刻さは、単に議席数が減ったことだけではない。別の都議会自民党関係者は、「数字も悪いが、内容が悪すぎる」とその原因を説明する。トップ当選を果たしたのは23区では港区や新宿区などわずか4選挙区にとどまり、ほとんどが2番手、3番手での当選だった。さらに、野党候補にわずかに及ばず「次点」に泣いた候補が19人もいたという。これは、自民党候補が接戦で競り負けるケースが多かったことを示している。
その結果、千代田区、渋谷区、中野区など、自民党議員が一人もいない「空白区」が21選挙区にも広がった。特に自民党関係者の間で衝撃が走ったのが豊島区だ。定数3に対し、都民ファースト、共産党、公明党、「再生の道」、そして自民党の5人が争ったが、自民党候補は最下位の5位に沈んだ。当選実績のない「再生の道」の候補にすら敗れるという結果は、信じがたい惨状だったという。
東京都議会議員選挙の応援に駆け回る小泉進次郎農水大臣
進次郎氏投入も効果なし？出口調査が示す現実
冒頭で触れた小泉農水相がオートコールで支援を訴えた渋谷区（定数2）でも、自民党候補は2位の都民ファースト候補に6000票以上の大差をつけられ、次点での落選に終わった。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、「出口調査によれば、自民党支持層の53％しか自民候補に投票していない」と指摘する。これは、都民の自民党離れ、特に長年の支持者からの離反が顕著であることを如実に物語っている。裏金問題などに対する根強い不信感が、小泉氏という人気者を投入しても覆せなかった現実が浮き彫りになった形だ。
結論：参院選に向けた自民党の課題
東京都議選での歴史的な大敗は、自民党が直面している厳しい現実を突きつけた。裏金問題に端を発する国民の根強い不信感は、地方選挙でこれほどまでの惨敗をもたらした。人気閣僚である小泉進次郎氏を前面に出す戦略も不発に終わり、党勢回復の糸口は見えていない。
迫りくる参議院選挙を控え、このままでは国政選挙でも厳しい戦いが予想される。党内では石破首相への不満が高まる中、小泉氏の「首相化プラン」といった議論も浮上しているが、都議選の結果は、単に人気者であるだけでは党の危機を救えないことを示唆している。自民党は、根本的な信頼回復に向けた戦略を喫緊に求められている。
参照元:
https://news.yahoo.co.jp/articles/47296a002e6c9e2a4434498ac7040f07dcbc0bbc
