台湾「漢光演習」開始、中国侵攻想定し最長10日間

中国による可能性のある軍事侵攻を想定した台湾の最大規模の年次演習「漢光演習」の実動演習が9日、台湾各地で始まった。今年で第41回を迎えるこの演習は、中国による「グレーゾーン作戦」への対応や、持久戦で相手の戦力を削る「縦深防御」に重点を置き、期間を従来の5日間から過去最長となる10日間に延長している。中国が米国の軍事介入前に台湾を制圧する「速戦即決」を目指す中、台湾は継戦能力を向上させて抑止力を高める狙いだ。

台湾軍事演習「漢光」開始、兵士らが防御準備台湾軍事演習「漢光」開始、兵士らが防御準備

演習の重点と変更点

国防部(国防省に相当)によると、第41回となる今年の演習では、昨年に続き事前のシナリオに沿う「実演」を減らし、各部隊に敵の状況を随時伝達することで、より実戦に近い形で行われる。軍中枢との通信が途絶した場合に現場の指揮官が独自に作戦を遂行する「分散型指揮統制」能力も今回検証される。これは、現代戦における指揮系統の寸断リスクに対応するための重要な訓練となる。

演習の日程と段階

演習はまず9~11日にかけて、中国機や艦船による台湾周辺での攪乱(かくらん)行為や偽情報を用いた認知戦などの「グレーゾーン作戦」への対応を訓練する。12日には同作戦の強度が高まったことを受けて戦争準備態勢に移行し、13日以降は海岸付近で上陸部隊を狙い撃ちする対着上陸作戦や、市街戦を含む重層的な「縦深防御」演習を実施する。

都市強靭化演習も同時実施

15~18日には、住民らが防空・救護訓練などを行う「都市強靭(きょうじん)化演習」も並行して実施される。これは、有事における民間人の保護と都市機能の維持を図るもので、総力戦を想定した防衛体制の一環として位置づけられる。

台湾の防衛決意

台湾軍当局者は「今回の演習を通じて国際社会に対し、台湾人が自らの国を防衛する決意を伝えたい」と語った。これは、中国からの圧力が高まる中で、自衛のための軍事的な準備を進めると同時に、国際社会からの理解と支持を得るためのメッセージと言える。

新装備の参加と公開

今回の演習には、4日発足したばかりの米国製高機動ロケット砲システム「ハイマース」の運用部隊が初めて参加する。また、昨年12月に米国から第1陣が到着した最新鋭戦車「M1A2Tエイブラムス」の実弾射撃訓練も10日に公開される予定だ。同戦車はまだ本格配備前のため、漢光演習の正式な一環としては位置付けられていないものの、その能力を示す機会となる。

漢光演習に参加する米国製ハイマース(高機動ロケット砲システム)またはエイブラムス戦車漢光演習に参加する米国製ハイマース(高機動ロケット砲システム)またはエイブラムス戦車

結論

台湾は今回の過去最長となる「漢光演習」を通じ、米国の軍事介入前の「速戦即決」を目指す中国に対し、持久戦となる「継戦能力」の向上と「縦深防御」による抑止力の強化を図る。これは台湾の自衛の決意を示す重要な取り組みであり、国際社会にその能力と意志を示す狙いがある。

参考資料

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