欧州連合(EU)は、米国との貿易交渉が合意に至らなかった事態を想定し、210億ユーロ(約3兆6500億円)規模の対米関税リストを準備していることが明らかになった。イタリアのアントニオ・タヤーニ外相が14日、伊紙メッサジェロのインタビューで言及した。同外相はまた、ユーロ圏経済を支援するため、欧州中央銀行(ECB)が大規模な新たな債券購入プログラムや追加利下げを検討すべきとの見解も示した。
ローマで撮影された、EU・米国間の貿易交渉についてコメントするイタリアのアントニオ・タヤーニ外相
米国による高関税措置とEUの対応
米国のトランプ大統領は12日、メキシコと欧州連合(EU)からの輸入品に対し、8月1日から30%の高関税を適用すると発表した。これに対し、EUのフォンデアライエン欧州委員長は13日、米国の関税への対抗措置の停止期間を8月上旬まで延長し、引き続き交渉による解決を目指す方針を示した。
イタリア外相の懸念と展望
タヤーニ外相はインタビューで、米国との交渉が不調に終わった場合、既に準備済みの210億ユーロ規模の関税措置に加え、第2弾の導入も可能性があるとの認識を示した。しかし、同外相は同時に、交渉は進展すると確信しているとも述べた。「関税は米国のみならず、全ての国に打撃を与える。株価が下落すれば、米国民の年金や貯蓄が危険にさらされる」と、関税措置の負の側面を強調した。同外相は、最終的な目標として「ゼロ関税」と、米国、カナダ、メキシコ、欧州間の自由な市場の実現を掲げた。
EU貿易担当委員の見解
EU欧州委員会のシェフチョビッチ委員(通商・経済安全保障担当)は14日、米EU間の貿易交渉が双方にとって前向きな結果に近づいているとの見方を示す一方、米国による30%の関税が発動されれば、貿易が事実上停止すると警告を発した。
結論
このように、EUは米国による高関税措置に対し、対抗措置の準備を進めつつも、交渉による解決を優先する姿勢を維持している。しかし、米国が予告通りに関税を発動した場合、広範な経済的影響が生じることへの懸念も表明されており、今後の貿易交渉の行方が注目される。