将棋界の注目を集める伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦七番勝負において、藤井聡太王位(竜王・名人・王座・棋聖・棋王・王将=23)は、挑戦者の永瀬拓矢九段(32)との第5局で敗北を喫し、対戦成績を2勝3敗とされました。この結果は、藤井王位が2日制の七番勝負で初の連敗を記録するという、異例の事態として将棋ファンの間で大きな話題となっています。次なる第6局は、9月9日と10日に静岡県牧之原市「平田寺」で繰り広げられる予定です。
激戦の末、藤井王位が初の「2日制七番勝負連敗」
徳島市「渭水苑」で26日と27日の両日にわたり開催された王位戦第5局は、両者得意の「角換わり腰掛け銀」という攻め合いが華となる戦型で幕を開けました。初日、先手の永瀬九段は5段目の浮き飛車という研究手を披露。これに対し、藤井王位は長考の末、龍取りの角打ちといった積極的な勝負手を放ち、局面を動かしました。しかし、終局後、藤井王位は「急所を突かれて、速度負けしているかなと思った」と自身の形勢判断の甘さを認め、相手に傾いた流れを最後まで引き戻すことはできませんでした。この敗戦は、藤井王位がタイトル戦の2日制七番勝負に17度目の登場にして初めて経験する連敗となりました。
第66期王位戦第5局、永瀬拓矢九段との終局後感想戦に臨む藤井聡太王位
「最速敗戦」と課題、迫る過密スケジュール
藤井王位の終局時間は午後3時47分と、七番勝負のタイトル戦において歴代3位となる「最速敗戦」という不名誉な記録となりました。この結果を受け、藤井王位は「形勢判断が甘く、課題の残る一局だった」と完敗を認め、今後の課題を明確にしました。タイトル戦のシリーズにおける連敗自体は、2024年5月2日の叡王戦五番勝負第3局で同学年の伊藤匠七段(現叡王)に敗れて以来、約1年4カ月ぶり2度目のことです。
そして、間もなく9月4日からは伊藤叡王を挑戦者に迎える王座戦五番勝負が開幕し、その初戦はシンガポールでの海外対局というハードスケジュールが控えています。
第6局へ向けた決意と静岡での無敗記録
立て続けの敗戦に、藤井王位は「前局と本局、内容の良くない将棋が続いてしまった」と反省の弁を述べつつも、次なる第6局への強い決意を表明しました。「第6局は終盤まで際どい熱戦にできるようにしたい」と語り、巻き返しを誓っています。
幸いにも、静岡県でのタイトル戦はこれまで8戦8勝という藤井王位の強さを象徴するデータがあり、相性の良い地での対局となります。この連敗を重く受け止めつつも、6連覇という偉業達成に向けて、藤井王位がその卓越した実力を発揮し、再び勝利の流れを引き寄せることができるか、次局に大きな注目が集まります。