戦後80年の節目を迎え、日本に最新鋭のステルスSTOVL戦闘機「F-35B」が自衛隊機として初めて配備されました。高い性能を誇りながらも、従来の戦闘機とは異なる運用上の課題を抱えるこの機体は、日本の空と海の防衛体制における新たな要として、国内外から大きな注目を集めています。報道カメラマンの宮嶋茂樹氏は、F-35Bが宮崎県新田原基地にその姿を現した歴史的な瞬間を克明に記録。その模様と今後の日本の防衛におけるF-35Bの展望を詳しくお伝えします。
雲間から現れた「ライトニングⅡ」:新田原基地に刻まれた歴史の一ページ
2025年、まさに戦後80年という節目の年に、我が国に再び空母艦載戦闘機が配備されるという歴史的瞬間が訪れました。この選ばれし瞬間に立ち会った感動は、太平洋戦争開戦時の真珠湾攻撃後、空母「赤城」に帰還した攻撃隊長・淵田美津雄中佐を出迎えた航空参謀・源田実中佐の心情にも通じるものがあるかもしれません。
現場となったのは、宮崎県にある航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地。2025年8月10日の13時28分、小雨が降り止まぬ中、どこから聞きつけたのか県内のみならず全国から駆けつけた多くの航空機ファンが見守る中、雲の切れ間から轟音と共に姿を現したのは、まさにそのF-35B、通称「ライトニングⅡ」でした。その黒い機体が宮崎の空を切り裂く光景は、日本の防衛史における新たな章の始まりを告げるものでした。
宮崎県新田原基地上空を飛行する航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F-35BライトニングII
「いずも型護衛艦」から自衛隊機へ:F-35B配備の画期的な意味
実は、F-35B戦闘機が日本の防衛に関わるのはこれが初めてではありません。昨年秋、アメリカ西海岸サンディエゴ沖の太平洋上で実施された、事実上の空母として改修された海上自衛隊の護衛艦「かが」の飛行甲板上における固定翼戦闘機運用訓練において、このF-35Bが使用されました。その際は、「かが」艦載機を示す塗装は施されていたものの、機体の国籍を示す識別マークは米軍機のものであり、視認しにくいロービジブル(Low Visibility)で描かれていました。
しかし、今回の新田原基地への配備は、状況が大きく異なります。今回配備されたF-35Bは、れっきとした航空自衛隊所属の機体であり、日本の防衛力を自らの手で強化するという明確な意志の表れです。これは、戦後長らく「空母を持たない国」であった日本が、固定翼戦闘機を運用可能な自衛隊の航空戦力を国内に保有するという、歴史的な転換点を示しています。日本の安全保障環境が変化する中で、F-35Bの自衛隊への導入は、地域の安定と防衛能力の向上に不可欠な一歩と言えるでしょう。
結論
航空自衛隊新田原基地へのF-35Bステルス戦闘機の配備は、日本の防衛史において画期的な出来事です。戦後80年という節目に、最新鋭のSTOVL(短距離離陸垂直着陸)戦闘機を自衛隊機として運用することは、日本の防衛能力を飛躍的に向上させ、変化する国際情勢における抑止力を高める上で極めて重要な意味を持ちます。この「ライトニングⅡ」は、日本の空と海の安全保障を担う新たな象徴として、今後の動向が注目されます。
参考文献
- 文春オンライン. (2025年9月4日). 戦後初の空母艦載機「F-35B」の歴史的デモフライトを写真で一気に見る. Yahoo!ニュースより引用. https://news.yahoo.co.jp/articles/1303883995000d7bc289aefda374860b2c2cb4a1