俳優・清水尋也容疑者逮捕:日本の大麻規制法改正と歴史的議論

俳優の清水尋也容疑者(26)が麻薬取締法違反の疑いで逮捕された事件は、日本の薬物規制とその歴史的背景に再び光を当てています。今年7月10日頃の大麻所持容疑で逮捕された後、家宅捜索で乾燥大麻が発見され再逮捕に至った清水容疑者は、20歳での米国留学中に大麻を知ったと供述。この一件は、著名人の薬物事件として社会に衝撃を与えつつ、2023年末に改正された大麻関連法の意義と、長年にわたる大麻規制の議論を浮き彫りにしています。

俳優・清水尋也容疑者、大麻取締法違反で逮捕

警視庁は9月3日、俳優の清水尋也容疑者を麻薬取締法違反の疑いで逮捕しました。当初は7月10日頃の大麻所持容疑でしたが、その後の家宅捜索で乾燥大麻が見つかり、同日夕方に再逮捕されたものです。清水容疑者は、20歳の頃に短期留学していた米ロサンゼルスでのパーティーで大麻に接したと供述。カリフォルニア州では21歳以上であれば嗜好品としての大麻の所持・使用が州法で認められていますが、同容疑者は帰国後も日本で入手・使用を続け、「収入が増えた2年くらい前から吸う量が増えた」と説明していると報じられています。

麻薬取締法違反容疑で逮捕された俳優の清水尋也容疑者麻薬取締法違反容疑で逮捕された俳優の清水尋也容疑者

2023年には映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」に出演していた清水容疑者。この作品で共演した永山絢斗容疑者も同年6月、大麻取締法違反容疑で逮捕され、有罪判決を受けています。両者が共に使用したという事実は確認されていませんが、著名人の大麻関連事件が相次ぐ中での清水容疑者逮捕は、社会に大きな影響を与えています。

大麻規制法の改正:麻薬取締法への移行と「使用」の禁止

清水容疑者が「麻薬取締法違反」で、永山容疑者が「大麻取締法違反」で逮捕された背景には、日本の大麻関連法の大きな改正があります。2023年12月に国会で可決・成立した法改正により、従来の「大麻取締法」は「大麻草の栽培の規制に関する法律」へと変更され、大麻の「所持」や「譲渡」に関する規制は「麻薬及び向精神薬取締法」、通称「麻薬取締法」に移行しました。

この改正の最も重要な点は、これまで規制対象外だった大麻の「使用」が禁止されたことです。これにより、大麻は覚醒剤やヘロインなどの他の違法薬物と同等に扱われることになり、その使用が法的に厳しく罰せられることになりました。従来の「大麻取締法」では所持・譲渡が禁止されていても、「使用」が禁止されていなかったことが、一部で大麻が他の薬物と比べて安全であるという誤った認識を生む一因となっていた可能性も指摘されています。

論争の歴史:「伝説の大麻擁護記事」が問いかけたもの

大麻に関する議論は、日本において古くから存在します。特に記憶されているのが、1977年にミュージシャンの井上陽水氏が大麻所持で逮捕された際に毎日新聞が掲載した「伝説の大麻擁護記事」です。9月14日付の第5面、社説の隣に9段にわたって掲載された「記者の目」と題された記事は、当時の編集委員によって執筆され、その内容は大きな話題を呼びました。

記事の一部を抜粋すると、「いまどき有名スターがマリファナで捕まって全国的なスキャンダルになるのは世界広しといえども日本ぐらいのものだ。たかがマリファナぐらいで目くじら立てて、その犯人を刑務所にやるような法律は早く改めたほうがいい」と述べ、大麻規制に対する疑問を投げかけていました。さらに、「井上陽水は『アメリカでマリファナの味を覚えた』と自供したそうだが、マリファナを吸うことも、それに対するタブー意識も、第二次大戦後アメリカから日本へ直輸入されたものである。大麻取締法がまさにその象徴だ」と、日本の大麻規制が米国の影響下にあることを示唆しました。

逮捕前の俳優・清水尋也氏と人気女優のツーショット(参考資料)逮捕前の俳優・清水尋也氏と人気女優のツーショット(参考資料)

また、「日本産のマリファナは陶酔物質THC含有量が少ないといわれているが、その国産マリファナを日本人が古くから快楽のために使っていた可能性は否定できない」とも記されており、かつては日本の生活に溶け込んでいた可能性のある大麻と、現代の法規制とのギャップが指摘されていました。この歴史的な記事は、大麻規制のあり方について、社会に深く問いかけるものでした。

清水尋也容疑者の逮捕とそれに伴う大麻規制法の改正の話題は、単なる芸能ニュースに留まらず、日本の薬物政策の現状、その歴史的背景、そして国民の意識について再考を促す機会となっています。国際社会における大麻合法化の動きと日本の厳格な規制との間で、議論は今後も続くことでしょう。

参考資料