「長男としてのプレッシャーもあったのかもしれないね……」──そう述懐するのは、殺人未遂の容疑で東京地検に送検された陸上自衛官・大津陽一郎容疑者(43)=東京都練馬区=の地元の知人だ。自衛隊で25年間働き、同僚からも「寡黙で真面目」と評された容疑者が、なぜ人を殺めようとしたのか。
取材班は男の背景を知るため、出生地である茨城県常陸大宮市を訪ねた。そこで明らかになったのは、大津容疑者の”恵まれた生育環境”だった。【前後編の前編】
全国紙社会部記者が事件を振り返る。
「大津容疑者は11月16日、東京都赤坂のライブハウス前で、出演予定だった40代女性の左脇腹などを刺して殺害しようとした疑いがある。襲われた女性は当初、『犯人に心当たりがない』と言っていましたが、実際は知人でした。
逮捕前の任意聴取で男は『9年前にSNSで知り合い、交際していた』『妻子がいることは伏せていた』と話しています。ことしの夏ごろ、2人は円満に関係を解消したということですが、捜査関係者はそうはみていない。破局の前後でトラブルになった可能性を視野に調べを進めています」
男は勤務地の朝霞駐屯地近くにある戸建てで家族と暮らしていた。近隣住民や親族などはみな「真面目でいい人だから信じられない」「奥さんともうまくいっていたはず」などと口を揃えるばかりで、”不倫”に興じていた様子はうかがえなかった。
その一方で、「家のことは奥さんばかりがやっていた」と話す人物も。大津容疑者の自宅近隣に住む町内会の関係者が言う。
「ご家族が引っ越してこられたのは6年前。お子さんは3人かな。旦那さん(大津容疑者)は青森に単身赴任していたから、ご近所からもほとんど話を聞かないね。彼は4年間くらいあちらの駐屯地にいたようで、戻ってきたのは2年ほど前です。
奥さんとお子さんはとてもいい人ですよ。明るくて気丈で、地域のことも何でもイヤと言わずにやってくれる。でも旦那さんはそういう町会のことには参加しなかったね。仕事柄、仕方ないのかもしれないけど、朝早くに家を出て遅くに帰ってくるという生活だったみたいだから、家のことは奥さんに任せきりだったのでしょう。事件の内容を聞くほどに、奥さんと子どもが気の毒ですよ」
そんな大津容疑者は1981年、茨城県常陸大宮市に生まれた。実家があるのは、JR常陸大宮駅から車で20分ほどの距離にある山間部だ。地元の知人曰く、男は周囲から”名家の坊ちゃん”として知られていた。






