現在の若者を指す言葉としてすっかり定着した「Z世代」だが、そもそもZ世代とはどういう経緯でできた言葉かご存じだろうか?日本の若者だけで使われる言葉ではなく、アメリカ発の概念であり、アメリカのZ世代の特徴のひとつは「戦争を知らない」ことだ。経営学者・舟津昌平氏が、アメリカと日本のZ世代の消費行動や価値観を解き明かす。※本稿は、舟津昌平『若者恐怖症――職場のあらたな病理』(祥伝社)一部を抜粋・編集したものです。● Z世代という言葉の源流は アメリカの大ヒット書籍
現代の若者は何を信じていいかわからなくなっている。それを確認するために「Z世代」という言葉についてあらためて考えてみたい。
Z世代。現代の若者を象徴する概念として既に何度も取り上げている。ただ一部の方は言葉自体に胡散臭さを感じるようで、そんな表現を使う時点で信頼できないといったリアクションを受けることさえある。
Z世代は存在しないとかZ世代としてくくられることに嫌悪感を持つといった話も、そういったニュアンスに影響を受けているのだろう。しかしそうしたイメージとは裏腹にZ世代はわりと由緒ある(?)概念である。
各所で話したところ意外にも知られていない感覚を持ったのだが、Z世代はアメリカ発の概念である。先に「X世代」がいたのだ。1965〜80年生まれの世代を指し、X世代(Generation X)という言葉を用いた書籍がヒットしたことで広まっていった。
80〜90年代に生まれたY世代が続き、Z世代はその系譜における「第3世代」なのである。
Z世代がアメリカで注目される理由はまず、数の多さと購買力である。アメリカにおいて全人口に対するZ世代の割合はざっと2割台。日本は2023年で12%程度だ。
もちろん10代後半から20代前半の若者は現時点でたいした購買力を持たない。しかし収入の増大を見越して早い段階でターゲットとしてとらえるべく、商業的な注目度が高まっている。アメリカのZ世代はまずマーケティング対象なのだ。
ある顧客が一生涯で払うお金を指して顧客生涯価値(Life Time Value、LTV)と呼ぶ。LTV重視のマーケティング施策をとるなら、今後の人生が長く残されているZ世代は確かに有力な市場である。
● とてもアメリカ的な思考から誕生した 戦争を知らない世代の符丁がZ世代だ
マーケティングの他にも、日本人からすればあまりピンとこないであろうZ世代を説明する重要なファクターがある。X〜Z世代すべてにつながる、とてもアメリカ的な要素である。戦争だ。
X世代はベトナム戦争やキューバ危機の時代に生まれた人々を指す。Y世代はベトナム戦争終結からベルリンの壁崩壊。ちなみにY世代は非正規雇用労働者が多く経済不安を抱える世代でもある。
そしてZ世代は「戦争を知らない世代」なのだ。
「ガザは、Z世代にとってはじめてのリアルな戦争だ」。米大手メディアのウォール・ストリート・ジャーナルが2023年に出した記事タイトルである。
同年10月7日にパレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに本格的な攻撃を仕掛け「2023年パレスチナ・イスラエル戦争」と呼ばれる戦争が勃発した。これがアメリカのZ世代にとって「初の戦争」だというのである。
背景構造として、アメリカにおける軍事の強固な存在感について言及すべきだろう。アメリカが覇権国であり続けてきた背景には、科学や技術、イノベーションの力があった。
それらの担い手は企業や大学であり、特に大学は国からの補助金が多くを占める。その国からのお金に軍がおおいに絡むのである。マサチューセッツ工科大学(MIT)やスタンフォード大学など著名な大学も軍から大規模な支援を受けている。





