埼玉県内で家出をしていた女子中学生(当時14歳)に売春をさせたとして、自称・暴力団員の男ら2人が逮捕されました。容疑者らは少女になりすまして男性客を募る手口を使っており、集めた金を全て搾取していたとみられています。この事件は、家出をした未成年者が悪質な大人に付け込まれる深刻な社会問題を浮き彫りにしています。
事件の概要
警視庁少年育成課は6月9日までに、埼玉県草加市に住む自称・暴力団員の三ノ輪勝容疑者(33)と、春日部市に住む無職の伏見千尋容疑者(32)を、児童福祉法や児童買春・ポルノ禁止法違反などの疑いで逮捕しました。逮捕容疑は、昨年12月、当時中学3年生だった少女AさんとSNSで知り合い、Aさんが家出をしていることを知ると、「うちに来る?」などと誘い、伏見容疑者の自宅アパートに泊まらせた上で、Aさんに売春させたというものです。
巧妙な手口と金銭搾取
警察の調べによると、容疑者らはAさんになりすまし、出会い系サイト上で「会える人はいませんか?」と男性を誘い出していました。容疑者らの勧誘に応じた20代と40代の男性客に対し、Aさんは埼玉県内のホテルで売春をさせられたとされています。Aさんは売春の対価として男性客から合計12万円を受け取りましたが、三ノ輪容疑者らはこの金をAさんに渡さず、全額を自分たちの収益としていた模様です。
事件の発覚と当事者の供述
事件は、Aさんが伏見容疑者のアパートに約6日間滞在した後、自力で帰宅したことで発覚しました。Aさんは警察に対し、売春で得た金を容疑者らに渡したことについて、「泊めてくれるので嫌われたくなかった」と供述しているといいます。一方、三ノ輪容疑者らは「カネを稼ぐためだった」と犯行を認めているとのことです。6月9日には両容疑者が送検されました。伏見容疑者は顔を覆い憔悴した様子で、顔全体にタトゥーを入れた三ノ輪容疑者は多くの報道陣に驚いたような表情を見せました。
児童買春容疑で逮捕・送検された男女の容疑者
家出少女が巻き込まれる社会問題の背景
元神奈川県警の刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は、この事件に関連し、新宿・歌舞伎町の「トー横キッズ」の問題など、家出した少年少女が犯罪に巻き込まれるケースが後を絶たないと指摘します。経済力のない家出中の子どもたちは、見知らぬ人の誘いに乗りやすく、無料で泊めてもらった恩義から、売春のような無理な要求を断りきれない傾向にあるといいます。小川氏は、今回の容疑者のように、そうした少年少女の弱みに付け込み、金儲けの手段にしようとする人間が少なくない現状に触れ、家出した子どもたちが被害にあう犯罪を減らすためには、国が「こども家庭庁」などを中心に、家出した子どもたちをサポートする支援システムをより強化すべきだと提言しています。
今回の事件は、家出という困難な状況にある未成年者がいかに容易に犯罪の餌食となり得るかを示す痛ましい事例です。容疑者らは少女の立場を利用し、悪質な方法で金銭を搾取していました。警察は今後、余罪についても捜査を進める方針です。社会全体で、家出をした子どもたちへのセーフティネットを構築し、彼らが安全な環境で過ごせるよう支援することが急務です。