大阪市内のファストフード店で、特定抗争指定暴力団六代目山口組系の組員らが白昼に大乱闘を起こし、傷害や殺人未遂容疑で計9人が逮捕された。家族連れなども利用するマクドナルドという公共空間で山口組系組員らが乱闘した背景には、「シノギ」と呼ばれる利権を巡る深刻な対立があった。
事件の概要
5月、大阪府警はこの乱闘事件に関与したとして、六代目山口組系三代目弘道会傘下・野内組「権太会」幹部の李昌芳容疑者(55)、同組幹部の丁永剛容疑者(50)ら計7人を傷害容疑で逮捕した。この事件では、元暴力団員で不動産業を営む梁人彰容疑者(61)とその弟、喜博容疑者(56)も李容疑者らに対する殺人未遂容疑で逮捕されており、合計9人の逮捕者が出ている。事件は今年2月10日午後4時半ごろ、大阪府大阪市住之江区の「マクドナルド住之江公園駅前店」で発生した。
乱闘の背景と経緯
乱闘の発端は、李容疑者、丁容疑者、そして梁人彰容疑者の3人が店内で「シノギ」を巡る話し合いを持ったが決裂したことにある。捜査関係者によると、出所したばかりの梁人彰容疑者が、服役中に権太会に奪われた利権を取り戻そうとしたが、権太会側が返還を拒否。これが原因で李容疑者が激高し、話し合いが暴力に発展したとされる。
店内では李容疑者が梁人彰容疑者の顔面を殴り、丁容疑者も加勢して乱闘となった。約1分間の激しいやり取りで床に血痕が残るほどだったという。その後、店外で待機していた権太会の構成員ら5人が加勢に現れ、梁人彰容疑者を袋叩きにした。その様子を見ていた弟の梁喜博容疑者が車で駆けつけ、権太会側の7人に向かって車を突進。相手側がひるんだ隙に兄を乗せて逃走する際、立ち向かってくる権太会構成員を車ではね飛ばしたとされている。六代目山口組が特定抗争指定暴力団に指定されているため組事務所などの施設が使えず、市民が多く利用するマクドナルドが会合場所に選ばれたという背景もある。
大阪市住之江区のマクドナルド付近の駐車場。暴力団組員らによる乱闘事件の現場となった場所。
公共空間での暴力行為の影響
白昼のファストフード店という公共性の高い場所で暴力団の関係者らが乱闘に及んだことは、一般市民に大きな不安を与え、迷惑以外の何物でもない。今回の事件は、「シノギ」を巡る暴力団の抗争が、一般市民の日常生活の場にまで及んでいるという現実を改めて浮き彫りにした形だ。