鶴保庸介氏「能登地震は運がいい」発言が波紋 参院選への影響と広がる批判

参院選応援演説での自民党・鶴保庸介参院予算委員長の「能登で地震があったのは運がいい」という発言が、政界に大きな衝撃を与え、波紋を広げている。この問題発言は8日に和歌山市内で行われた演説の中で、2拠点居住推進の必要性を訴える文脈で飛び出したもので、能登半島地震の被災者感情を逆なでするとして、与野党双方から強い批判を浴びている。

鶴保氏は翌9日、発言について陳謝し、撤回した。「被災地への配慮が足りなかった」と釈明したが、議員辞職や離党については否定した。和歌山市で行われた記者会見では、「言葉足らずであったと同時に、例示として出すにも適当であったかどうかも深く考えなければならない」と述べた。しかし、会見中に時折薄ら笑いを浮かべる場面があり、中継を見ていた関係者からは「火に油を注ぐ」との懸念の声も上がった。

和歌山市での参院選応援演説中に発言する自民党の鶴保庸介参院予算委員長和歌山市での参院選応援演説中に発言する自民党の鶴保庸介参院予算委員長

与党内からも発言への非難が相次いだ。小泉進次郎農林水産相は「言語道断」と強く批判。連立与党である公明党の斉藤鉄夫代表も自身のX(旧ツイッター)で「到底容認できない」と不快感を示した。自民党ベテラン議員からは、特に能登の被災地を含む石川県の選挙区への悪影響を懸念する声が上がっており、長年勝ち続けてきた議席さえ危ぶまれるとの見方もある。石破茂首相が進める「防災」政策の訴えにも説得力を欠けさせる結果を招きかねない。野党はこれを見逃さず、立憲民主党の野田佳彦代表は千葉県浦安市の街頭演説で「被災地の思いを何も分かっていないことがよく分かった」と非難し、「能登の皆さんに寄り添う気持ちもない自民からは政権を取りにいくしかない」と主張。共産党の田村智子委員長は岡山市で「議員辞職すべきだ。自民党政治の本音が露呈した」と追及している。

政権の存亡がかかる参院選は、産経新聞社とFNNの情勢調査によると、与党が非改選議席を含む参院の過半数(125議席)を維持できるか微妙な情勢にあり、数議席の差が明暗を分ける可能性がある。このような状況下での政治家の失言は、選挙結果に致命的な影響を与えかねない。過去には、森喜朗首相(当時)が平成12年6月の衆院選中に無党派層に関する不適切な発言で自民党を大幅な議席減に追い込んだ例があり、今回もその再来を懸念する声がある。

自民党内には鶴保氏の離党を求める意見もあるが、森山裕幹事長は9日、鶴保氏に電話で厳重注意を与えるにとどめた。記者会見で森山氏は、「党則違反ではなく、それが(規則上)できる最大のことだ」と説明した。

鶴保氏の不適切発言は、参院選の終盤戦に入った与党にとって大きな痛手となった。被災地への配慮の欠如を示すかのようなこの発言は、有権者の信頼を損ない、選挙情勢にさらなる不確実性をもたらしている。今後の選挙戦にどのような影響を与えるか、注目される。

[記事元] Yahoo!ニュース (産経新聞)