「今の大阪どうですか? 今の日本どうですか? なんか違うよな。このままでいいのかな。そんなふうに感じていませんか?」 大阪の参院選候補者、ミュージシャン世良公則氏が2025年7月12日、JR京橋駅前で初めての街頭演説を行った。公示日直前の出馬表明以来、SNSでの発信が中心だった世良氏の異色の選挙活動に注目が集まっている。ほぼ予告なしの「ゲリラ演説」にもかかわらず、200人以上の聴衆が集まり、その人気の高さを示した。
大阪・京橋駅前に突然の登場
7月12日の街頭演説は、当初予定していた11日が大雨警報のため延期された後の実施となった。突然の告知にもかかわらず、JR京橋駅前には多くの人々が詰めかけた。世良氏の登場に、聴衆からはツーショット写真を求める長蛇の列ができ、その知名度の高さを物語っていた。選挙カーや「たすき」、「のぼり」といった従来の選挙アイテムを使用せず、黒Tシャツにジーンズという普段着姿で路上に立った世良氏は、マイク1本で聴衆に語りかけた。まるでライブのような感覚で進められる演説スタイルは、一般的な候補者とは一線を画している。
大阪のJR京橋駅前で参院選の街頭演説を行うミュージシャンの世良公則氏
ミュージシャンから政治の舞台へ
世良公則氏は、1970年代後半から1980年代にかけて「あんたのバラード」「燃えろいい女」など数々のヒット曲を生み出したベテランミュージシャンである。現在69歳を迎えた今も現役でライブ活動を続けている。「『あんたのバラード』の『あんた』という言葉は、まさに大阪で暮らしたからこそ生まれた」と語り、自身と大阪との深いつながりを強調した。また、「皆さんが直接、話を聞きたい、声を聞きたいと言ってくれたから、こうやって皆さんの前で声をあげることができている」と述べ、聴衆との双方向のつながりを重視する姿勢を示した。
独自のスタイルと政策アピール
世良氏の街頭演説では、具体的な政策として、大阪のオーバーツーリズム問題に言及した。「外国語が飛び交い、大阪弁が聞こえなくなった」と現状を憂い、増加する外国人による不動産取得に対して規制が必要であると訴えた。ミュージシャンならではの説得力のある語り口は、聴衆の心に響いたようで、「かっこいいわ」「言葉が胸に響きますね」といった好意的な反応が多く聞かれた。彼の独特な選挙スタイルとメッセージは、有権者に新鮮な印象を与えている。
大阪選挙区の構図に影響か
改選数4の大阪選挙区では、これまでの参院選では日本維新の会が2議席、自民党と公明党がそれぞれ1議席を獲得するという構図が続いてきた。しかし、今回の選挙では、参政党の台頭に加え、世良氏の出馬がこの長年の構図を揺るがし始めている。参院選期間中の各メディアの情勢調査を総合すると、維新の元大阪市議・佐々木理江氏が優勢と伝えられる一方、自民党の元衆院議員・柳本顕氏、維新の元大阪市議・岡崎太氏、参政党の新人・宮出千慧氏、公明党の現職・杉久武氏らが激しく競り合っている状況だ。さらに、世良氏や共産党の清水忠史氏、立憲民主党の橋口玲氏、国民民主党の渡辺莉央氏らも追随しており、大阪選挙区は過去に例を見ない大激戦の様相を呈している。
結論
ミュージシャンとして高い知名度を持つ世良公則氏が、従来の選挙スタイルとは異なる方法で参院選に挑んでいることは、大阪選挙区において新たな動きとして注目されている。突然の街頭演説で健在ぶりと支持層の厚さを示し、彼の出馬が長年安定していた大阪の選挙構図に変化をもたらす可能性が指摘されている。今後の選挙戦の展開が注目される。