今年の夏は、各地で観測史上最高気温を更新し、東京都心では猛暑日の年間日数が過去最多を記録するなど、記憶に新しい猛烈な暑さに見舞われました。しかし、この異常な高温は夏で終わりではありません。気象庁は長期予報で「9月、10月も気温は高い」と発表しており、専門家は「例年より早く始まり、遅く終わる夏」が10月まで続く可能性があると警告しています。なぜ今年の秋はこれほど危険な暑さになるのでしょうか。その理由を深掘りします。
記録尽くしの猛暑、その影響は秋まで波及か
2023年の夏は、7月と8月に国内5地点で昨年の最高気温を更新しました。東京都心においても、猛暑日(35℃以上)の年間日数が過去最多を記録するなど、これまでとは一線を画す暑さでした。この過酷な夏の記憶が新しい中、気象庁からは「9月、10月も平年より気温が高くなる」という長期予報が発表され、多くの人が「秋の暑さ」への懸念を抱いています。この予測が示すのは、単なる残暑ではなく、異常な高温が秋の深まりとともに続く可能性です。
昨年記録的な猛暑に見舞われた東京で、秋も異常な高温が続く可能性を示唆するイメージ
専門家が解説!異常な「秋の暑さ」を引き起こす要因
三重大学気象・気候ダイナミクス研究室の立花義裕教授は、この「ヤバい秋」の主な要因を詳細に解説します。
まず挙げられるのは、日本近海の海水温が観測史上最高を記録していることです。立花教授によると、昨年も最高記録を更新しましたが、今年はそれをさらに上回る水準です。関東から西の海域では30℃を超え、平年であれば20℃を超えることのない東北地方や北海道周辺でも25℃を超える海域が見られます。水は土に比べて比熱が大きいため、一度温まると冷めにくい特性があります。さらに、海面からの水蒸気には温室効果があり、熱が逃げにくい環境を作り出します。この温かい空気が海上から流れ込むため、例年よりも長期間にわたって気温が高くなる傾向にあるのです。
次に、高気圧の動向が影響しています。通常、9月に入るとチベット高気圧は消滅し、太平洋高気圧も日本上空から南下することで気温は下がります。しかし今年は、チベット高気圧が消えたとしても、太平洋高気圧がなかなか南下しない状況が続いています。これは、偏西風が日本の北に蛇行しているため、高気圧がその影響を受けずに居座り続けられること、そして前述の記録的な海水温が冷えにくいため、高気圧の南下をゆっくりにしていることが原因です。
これらの要因から、立花教授は「10月くらいまでは暑い日が続くだろう。場所によっては30℃を超える気温になる可能性もある」と指摘します。昨年、東京都心では9月18日に35.1℃、10月2日には31.9℃を記録しましたが、今年はそれを上回る気温になる可能性も高いと警告しています。
また、季節の進行にも異変が見られます。昨年東京での初めての猛暑日が7月4日だったのに対し、今年は6月17日と約半月早く始まりました。この「夏が早く始まり、遅く終わる」という現象は、秋になっても暑さが収まらないことを意味します。立花教授は「季節の進行がこの秋は1ヵ月以上遅れるだろう」と述べ、今年の異常な暑さが10月頃まで続く可能性を示唆しています。
結論
今年の秋は、記録的な海水温の高さと、太平洋高気圧の異常な居座りにより、例年をはるかに上回る「危険な暑さ」が10月まで続く見込みです。気象庁の長期予報と専門家の見解は、今年の「夏」が季節の枠を超え、秋にまでその影響を色濃く残すことを示しています。私たちは、この長期にわたる高温への対策を怠ることなく、引き続き熱中症への警戒を強める必要があります。
参考資料
- Yahoo!ニュース: 「東京では昨年「9月に35.1℃」「10月に31.9℃」を記録。それを超える気温になる?」 (集英社オンライン, 2025年9月4日掲載)