安倍元首相銃撃事件:山上徹也被告が語る「闇」と旧統一教会、「ジョーカー」の影響

奈良地裁で開かれている安倍晋三元首相銃撃事件の公判は、11月20日の第10回公判から、いよいよ山上徹也被告(45)に対する被告人質問が始まりました。事件以来、彼が公の場で口を開くのはこれが初めてとなります。母親が傾倒した旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の信仰が家族にもたらした影響、そしてなぜ安倍元首相に凶弾を放つに至ったのか。12月4日の第14回公判まで計5回にわたる質問の中で、その動機と背景の一端が明らかになるでしょう。本稿では、事件直後の「週刊新潮」による山上被告のTwitter(現・X)や手紙、親族への取材に基づく分析を再録し、彼が抱えた「闇」の深層に迫ります。

山上徹也被告の「心の闇」:母の信仰と家族の崩壊

母の告白と事件への衝撃

事件から9日後の7月17日朝、山上被告の母親は旧統一教会の関係者に対し、電話で「今は少し落ち着いてきたけど、まだ今後のことは考えられない。まずは、安倍さんのご家族、親族の方々に謝罪したい。私の至らなさで……」と打ち明けたといいます。彼女の信仰が、息子である山上被告の人生を大きく狂わせ、今回の事件へとつながった経緯が浮き彫りになります。彼が凶行に及ぶきっかけとなった一つの要因として、ある映画の影響があったとされます。事件の3年前、愛知県常滑市の国際展示場から帰宅する道中、山上被告の脳裏には、数日前に観た映画のシーンが断片的に去来していました。

山上徹也被告が銃撃現場で取り押さえられる様子山上徹也被告が銃撃現場で取り押さえられる様子

旧統一教会トップへの襲撃計画と挫折

2019年の計画:韓鶴子氏への固い決意

2019年10月6日、この日は旧統一教会の信者にとって特別な日でした。教祖・文鮮明亡き後、「真のお母様」と崇められる教団のトップ・韓鶴子氏(79)が、日本の信者の前に姿を現す日だったのです。山上被告は「絶対に殺す」という固い決意を胸に、火炎瓶を忍ばせてイベント会場に入場しようと試みました。しかし、捜査関係者によると、「部外者は会場に入場できず、この時、山上容疑者は計画を断念しています」。彼は、その時抱いた失意を後にTwitterで吐露しています。

映画「ジョーカー」からの影響とその心理

ジョーカーが映し出す山上被告の絶望

山上被告は、旧統一教会のトップへの襲撃に失敗した後、Twitterにこう書き記しています。「オレがJOKERを観たのは鶴子がやって来る前日、名古屋でだった」(2020年8月12日)。この発言は、彼が2019年10月4日の日米同時公開初日に映画「ジョーカー」を鑑賞したことを示唆しています。韓鶴子氏が名古屋市内で「ジャパン・サミット」を開催する前日のことです。

彼はさらに、「ジョーカーは何故ジョーカーに変貌したのか。何に絶望したのか。何を笑うのか」(2020年1月26日)とも問いかけています。「ジョーカー」は、特殊な疾患を抱え社会の底辺から這い上がろうとする男が、やがて心を折られ、社会への復讐を企てる悪役「ジョーカー」へと変貌し、世間を騒乱の渦に巻き込む物語です。山上被告は、この映画の主人公に自身の境遇や絶望を重ね合わせ、行動へのきっかけの一つとした可能性が指摘されています。

まとめ

山上徹也被告の公判が進行する中で、彼の動機や背景、特に母親の旧統一教会への信仰が家族に与えた深刻な影響、そして「ジョーカー」という映画からの心理的な示唆が注目されています。かつて旧統一教会のトップを狙った襲撃計画の挫折、そしてその後の安倍元首相銃撃事件へと至る彼の「心の闇」は、今回の被告人質問を通じて、その全貌が徐々に明らかになることでしょう。この複雑な事件の真相解明が、今後の社会に多くの問いを投げかけることになります。

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