日中関係緊迫化:高市首相「台湾有事」発言と中国外交の波紋

2025年11月18日、日本と中国の間で外務省局長級協議が実施されました。これは、高市早苗首相の「台湾有事」に関する国会答弁をきっかけとした日中関係の緊張が高まる中で行われたものです。しかし、この協議の場で中国の劉勁松アジア局長が見せた“無礼な態度”が動画で拡散され、大きな波紋を呼んでいます。一連の出来事は、両国間の複雑な外交関係と、それに伴う世論の反応を浮き彫りにしています。

高市首相の「台湾有事」発言と中国側の反応

事の発端は、11月7日の衆議院予算委員会での高市首相の発言にあります。首相は台湾有事の最悪のシナリオを想定し、「存立危機事態になり得る」と答弁。この発言は中国側から激しい批判を招きました。翌8日には、中国の薛剣在大阪総領事が自身のX(旧Twitter)に、「その汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」と投稿。この投稿は後に削除されたものの、“犯罪予告”とも受け取られかねない極めて不適切な表現として、外交官の品位を欠くと多くの指摘が寄せられました。

こうした緊張が続く中、中国は14日深夜に駐中日本大使を呼び出し、厳重に抗議。さらに中国国民に対し、日本への渡航を控えるよう呼びかける事態へと発展しました。

「渡航自粛」を巡る日本の見方

中国が国民に日本への渡航自粛を呼びかけたことに対し、日本では異なる見方を示す声も上がっています。元内閣官房参与の高橋洋一氏は17日、自身のXで「中国人が日本渡航自粛を言い出したのはラッキー」「オーバーツーリズム是正になるし、経営管理ビザ見直しや不動産規制もやり易くなる」「このまま来ないと不動産没収かもWWW」と投稿し、これを好機と捉える姿勢を示しました。日本保守党の北村晴男参院議員も、「日本への渡航を控えて頂き、本当に有難うございます」と高橋氏と同様の意見を表明しています。

しかし、中国側は歩み寄る姿勢を見せていません。中国外交部は、日本との首脳級会談の予定を明確に否定し、対日姿勢をさらに硬化させる方針を鮮明にしています。

高市早苗首相の就任後初の会見高市早苗首相の就任後初の会見

劉勁松アジア局長の「無礼な態度」

日中間の緊迫感が漂う中で行われた11月18日の局長級協議では、さらなる問題が浮上しました。中国の劉勁松アジア局長が日本の金井正彰アジア大洋州局長と対面する際、両手をポケットに入れたままという態度を取ったのです。この様子が動画で拡散されると、「無礼だ」「品位を欠く」といった批判が集中しました。

著名人からも反応が相次ぎ、俳優の三田村邦彦氏はXで「なんですか!この無礼な態度!」と憤りを露わにしました。また、中国出身の日本維新の会・石平参院議員も、「チンピラ外交官の振舞いは、ヤクザ国家中国の本性を、余す所なく現している」と厳しく非難しました。

ネット上での「戦狼外交」への皮肉とユーモア

こうした中国側の「戦狼外交」(攻撃的な外交姿勢)とも称される一連の動きに対し、日本ではインターネット上で皮肉やユーモアで受け流す動きが広がっています。中国外務省や中国軍の対日批判を模した投稿を作成できるパロディジェネレーターまで登場し、「恐怖を押し売りする商売は笑い飛ばすのが一番良い」「脅迫に対してユーモアで切り返せる日本人ほんとスマートで好き」「大喜利化すれば怖さより結束が強まりそう」といった声が多数寄せられています。

外交が重苦しい空気に包まれる中で、ネットユーザーたちの“笑い”は、一時的に緊張を和らげ、国民の間に一種の連帯感を生み出す役割を果たしているのかもしれません。一連の外交問題は、日本と中国の関係性だけでなく、情報社会における世論形成の多様な側面をも浮き彫りにしています。

参考文献