何度注意しても聞かない「人気俳優」の態度を一変させた、山田洋次監督の「たった1つのお願い」


【写真あり】『男はつらいよ』第1作目(1969年)の“寅さん”はこんな感じだった

● 渥美清の機関銃のアドリブに 「気を張りっぱなし」

 黒柳 そもそもどんなきっかけで、“寅さん”という人をお考えになったんですか?

 山田 僕はまず『男はつらいよ』の前に、ハナ肇主演の喜劇を何本か作っていたんです。

 黒柳 そうですよね。

 山田 あの頃はよく“特別出演”という形で、いろいろな俳優が映画に出ていたんですよ。「こんなにいっぱい面白い俳優が出ていますよ」という作り方をしたものでした。それである時、人気のコメディアンの渥美清を出せと会社から言われた。

 黒柳 そうだったの。

 山田 しかしスケジュールは1日しか取れないから、ワンシーンだけ。そういうわけで『馬鹿まるだし』という映画に1日だけ、渥美さんが来たんです。

 黒柳 どんな印象でした?

 山田 「なんだかうるさい俳優が来たな」と思いましたね(笑)。当時の彼はね、間を置かないでモーレツな芝居をするんです。アドリブを機関銃のようにまくしたてて「どうだ、どうだ」というような。ハナ肇も、同じクレイジーキャッツの犬塚弘も渥美さんの圧倒的な珍演技に面食らって、オロオロしてしまう。僕としても気を張りっぱなしでした。

 黒柳 座長芝居だったのね。

 山田 ええ。なんだかものすごい芝居なんです。ようやく撮り終えて、お疲れ様でしたと挨拶した時に、渥美さんが言ったんです。「山田さん、今度は長いので付き合いましょうね!」と。

 黒柳 「長いの」?



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