阪神タイガース低迷がグッズ売れ行きに影を落とす?甲子園で見えたファン心理の変化

交流戦に入り、セ・リーグ球団は苦戦を強いられている。中でもリーグ首位を走っていた阪神タイガースは、サヨナラ負けを含む3年ぶりの6連敗を喫するなど、救援投手陣がリードを守り切れない試合が目立ち、チーム状況の異変が地元ファンの間にも影響を及ぼし始めているようだ。このチームの低迷傾向は、本拠地・甲子園球場周辺の阪神タイガース公式グッズショップの様子にも現れている可能性がある。

阪神は甲子園に戻り、交流戦の最終カードを戦う。甲子園球場には多くの阪神ファンが詰めかけ、球場前の公式ショップ「ALPS」や「DUGOUT」もにぎわいを見せている。球団創設90周年の記念ユニフォームやキャップなど新モデルの売れ行きは一見順調にも見える。しかし、ある50代の阪神ファンは、現在のグッズ売り場の雰囲気を評して「昨年の岡田はん(岡田彰布監督)の時の方が、商品にいろいろと動きがあったように思うな」と語った。

昨シーズン、岡田彰布監督が試合後のコメントで頻繁に口にする関西弁の「岡田語録」に関連した応援タオルが多数販売された。前述のファンは、その多様さを見て「どんだけタオル出すねん。岡田はんが口にした言葉でなんぼでもできるがな。ええ商売みつけよったな」と感じたという。ところが、今年は「オーソドックスな定番グッズが多い」との感想を漏らしており、昨季のような話題性の高い商品展開が少ないと感じているようだ。

阪神タイガース佐藤輝明選手が打席へ、右奥に甲子園球場のグッズショップ「ALPS」。チームの苦戦と球場のにぎわいを象徴。阪神タイガース佐藤輝明選手が打席へ、右奥に甲子園球場のグッズショップ「ALPS」。チームの苦戦と球場のにぎわいを象徴。

実際に、昨年は岡田監督の口癖である「そらそうよ」「お~ん」といったフレーズや、優勝を意味する「アレ」をもじった2023年のチームスローガン『A.R.E.(Aim! Respect! Empower!)』、そして2024年の『A.R.E. GOES ON』に関連したグッズが多く登場した。これらの商品は、チームの快進撃や監督の個性と結びつき、ファンの間で大きな話題を呼んだ。

特にヒット商品の一つとして挙げられるのが、岡田監督が試合中に口にしていることで話題となった「パインアメ」とのコラボレーション商品「パインアレ」だ。あまりの人気に入荷しても即完売となり、一人あたりの購入個数を制限するほどの売れ行きを見せた。

また、昨シーズンは、大山悠輔、佐藤輝明、近本光司、森下翔太、中野拓夢といった人気選手のグッズに加え、岡田彰布監督自身の関連グッズも多数販売され、岡田監督のグッズが真っ先に売り切れることも少なくなかった。監督のキャラクターやチームの勢いが、個別のグッズ売れ行きに直接的に反映されていたと言えるだろう。

一方で、現在の状況について前出のファンは、「藤川(球児)監督関連グッズはユニフォーム以外にあまり展開をしていない。やはり監督が交代するといろいろなところが変わるんやな」と言及している。このコメントは、必ずしも監督交代という事実を指しているのではなく、チームの指揮体制やベンチの雰囲気、そしてそれらがグッズ展開に与える影響に対するファンの認識を反映していると考えられる。チームの成績が振るわない中で、昨季のような監督の個性やチームの勢いを前面に出した「話題作り」となるグッズが少ないことが、ファンに「動きがない」と感じさせているのかもしれない。

プロ野球チーム、特に熱狂的なファン層を持つ阪神タイガースのような球団の成績は、単なるスポーツの結果に留まらず、地域経済やファンの心理、さらには社会全体の気分にも影響を与える社会現象となりうる。グッズの売れ行きや種類といった商業的な側面は、こうしたファンのエンゲージメントやチームへの期待感を測る一つのバロメーターとなる。昨季の「岡田効果」によるグッズブームは、チームの成功が地域に活気をもたらし、ファン心理を高揚させた具体的な表れだったと言える。現在のグッズ売り場の様子は、チームの苦戦がファンの間に微妙な変化をもたらしつつあることを示唆しており、今後のチームの巻き返しがグッズ売れ行き、ひいてはファン心理や地域経済にどう影響するかが注目される。