ゴミ屋敷に住むトラックドライバーの女性からの依頼は、「すべて捨てて、部屋を空にしてほしい」というものだった。部屋の中には、女性が大切にしていたモノが多く残されたままだった。
本連載では、さまざまな事情を抱え「ゴミ屋敷」となってしまった家に暮らす人たちの“孤独”と、片付けの先に見いだした“希望”に焦点をあてる。
YouTube「イーブイ片付けチャンネル」で多くの事例を配信するゴミ屋敷・不用品回収の専門業者「イーブイ」(大阪府)代表の二見文直氏に、生活をリセットするために部屋を一掃する人たちの真意を聞いた。
動画:【ゴミ屋敷とは違う】趣味の品でいっぱいの半年間手付かずの部屋
■大切なモノもすべて一掃したい
現場は大阪府内にあるマンションの一室。リビングに足を踏み入れると、生ゴミによる腐敗臭はないものの、床には無数の段ボール箱が積み重なり、そこからあふれ出したキャラクターグッズやコスプレ用品が散乱していた。
1メートルを超える模造刀、手づくりと思われる衣装など、趣味であるコスプレにかなりの情熱を注いでいたようである。
こういった「モノ屋敷」で多いのは、モノに愛着が湧いてしまっているがゆえに「いる・いらない」の判断ができずに捨てることができなくなっているケースだ。押し入れの奥から1年ぶりに出てきたようなグッズでも、いざ手に取ると途端に「大切なモノ」のような気がしてしまうのだ。
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しかし、住人からの依頼はシンプルだった。
「すべて捨てて、部屋を空にしてほしい」
すでに生活に必要なモノは取り出しているとのことだったが、趣味のモノはほとんど残されたままだった。
■段ボール箱に書かれた「B・I・O」の意味
現場に入ったスタッフは5名。モノの量自体はそこまで多いわけではないので、通常であれば2時間ほどで作業が完了するような現場だ。しかし、今回の予定は3時間。その理由は「仕分け」にある。
「ご依頼は『ゴミ屋敷』という括りでしたが、我々から見ればこれはゴミではありません。大半が趣味のモノや細々としたモノです。これらをすべてゴミとして処分することもできますが、そうすると廃棄料金が膨れ上がってしまうんです」(二見氏、以下同)