「沖縄に対する日本の主権は歴史的に疑わしい」。いわゆる台湾有事をめぐる高市首相の発言に対し猛反論している習近平・中国が声高に叫び始めた。ICU教授のスティーブン・R・ナギさんは「北京は歴史と学術を武器化して日本にノーコストで認知戦争を仕掛けている。彼らは即時の領土変更を要求しているわけではない。歴史の書き換えという種を蒔き、いつか収穫する日を待っている」という。その恐るべき戦略と、日本がとるべき対抗策とは――。
■「沖縄に対する日本の主権は歴史的に疑わしい」
2024年春、ある学術会議が北京で開催された。テーマは「琉球の歴史的地位」。参加者の多くは中国政府系の研究機関に所属する学者たちだった。彼らが発表した論文の結論は驚くべきものではない。「沖縄に対する日本の主権は歴史的に疑わしい」というものだ。
これは単なる学術的議論ではない。
ミサイル実験や海軍演習の陰で、中国は日本に対してより巧妙な作戦を開始している。軍事戦略家が「認知戦争」と呼ぶ手法だ。沖縄に対する日本の主権の正当性をじわじわと失わせようとする試みである。
この新たな“攻撃”は武力行使の一線を越えることなく、組織的な偽情報、つまり虚偽または誤解を招く情報の意図的な拡散を用いて人々の認識を操作し、確立された事実への信頼を蝕む作用がある。従来のプロパガンダとは異なり、認知戦争は学術機関、メディア、デジタルプラットフォームを武器化していく。
北京は10年以上にわたり、複数の琉球研究センターに資金を提供してきた。国営系研究者らが配置されたこれらのセンターは、歴史的な朝貢関係が何らかの形で、戦略的に重要なこれらの島々に対する日本の現代的主権を無効化すると主張する論文を発表し続けている。
では、中国は沖縄に関して具体的に何をしているのか。中国は、儒教倫理と古典的名著『論語』を持つ国である。その古典が重視している誠実さや礼節を放棄したような言動を日本に繰り返しているのはなぜか。
■中国の沖縄作戦のメカニズム
中国の沖縄へのアプローチは最も計算された形態の認知戦争である。
北京の琉球研究機関(国家資金で運営されながら独立した学術団体を装う)は、1879年の日本による琉球王国併合が不法であったとする歴史分析を絶え間なく発表している。これらの論文は国際的な学術ネットワークを通じて流通し、学会で発表され、中国国営メディアを通じて国内外の聴衆に向けて増幅される。
彼らが展開する論点は一貫したパターンがある。
琉球王国が1372年から19世紀末まで中国と朝貢関係を保ち、この関係が日本の併合に先立つものであるため、中国はこれらの島々に対する歴史的主張において優位にある、というものだ。一部の学者はさらに踏み込み、日本の沖縄編入を植民地侵略と位置付け、第二次世界大戦後の処理がこれを適切に解決しなかったと主張する。





