外国資本による日本国土買収の実態:遅れる農水省調査公表と隠された数字

最近、農林水産省が公表した外国資本による森林と農地の買収に関する調査結果に、大きな注目が集まっています。例年より大幅に遅れて発表されたこのデータは、単なる数字の羅列以上の深い背景と、日本の国土が直面する現実を浮き彫りにしています。本記事では、この公表遅延の真意、隠された数字の裏側、そして日本における外国資本による土地買収の現状について、専門家の見解を交えながら詳しく掘り下げていきます。

農水省調査公表の遅延とその背景

農林水産省が外国資本による森林と農地の買収面積に関する調査結果を公表したのは9月16日。例年、7月中旬から8月上旬にかけて行われる公表が、今年は2ヶ月近く遅れました。この異例の遅延について、2008年から「外資の国土買収」をテーマに全国調査を続ける国土資源総研所長の平野秀樹氏は、その背景に農水省の「統計精度向上への努力」があったと指摘します。また、参議院選挙で外資の土地買収規制が争点の一つとなったことも影響している可能性に触れました。この公表遅延自体が、問題の重要性と複雑さを物語っています。

日本の美しい自然風景と、外国資本による土地買収の課題を示す広大な土地の現状。日本の美しい自然風景と、外国資本による土地買収の課題を示す広大な土地の現状。

「わずか」を強調するタイトル変更の意図と実態

今年の調査結果に付されたタイトルは、「令和6年に外国法人等により取得された森林は全国の私有林の0.003%」「~農地は全国の農地面積の0.004%」と、買収面積のパーセンテージが強調されています。平野氏は、このタイトル変更は「買収された森林と農地はわずかで大したことはない」と印象付けたい農水省の意図が背景にあると見ています。

確かに、2024年に外資に取得された森林面積は382ヘクタールで全国の総私有林面積の0.003%、農地面積は175ヘクタールで総農地面積の0.004%という数字だけを見ると、全体に占める割合は非常に小さいと言えます。しかし平野氏は、公表された買収面積は森林も農地も、外資が実際に取得した実態より「1桁から2桁少ない」と指摘。農水省が「届け出があったものしかカウントしていない」という現状が、数字と実態との乖離を生み出していると警鐘を鳴らします。

増加する農地買収と北海道に集中する森林取得

農水省が調査結果の公表を始めた2017年から2023年までの農地買収の累計値は、3倍以上に増加しています。この増加の一因として、2024年春以降に「在留外国人による農地買収」が統計に加算されるようになったことが挙げられます。これにより農地買収の捕捉精度は一歩前進したと評価され、来年以降さらに買収面積が増加すると予測されています。

一方、外資に取得された森林の都道府県別件数を見ると、北海道が48件中36件と圧倒的に突出しています。これらの多くは「取得主体」が香港やシンガポールとなっており、「利用目的」はほとんどが「資産保有」とされています。

「資産保有」に隠された真の目的:租税回避と中国系資本

利用目的が「資産保有」とされている場合、その背景には利用目的が不明、あるいは「転売」が目的である可能性も含まれると平野氏は解説します。特にニセコリゾートで有名な倶知安町やニセコ町では、このような「資産保有」が多数を占めています。

取得主体が香港やシンガポールとなっている場合でも、その実態は中国系資本であることが多いと指摘されています。中国の企業や資産家は、税負担を軽減するために、租税回避地である香港やケイマン諸島などにペーパーカンパニーを設立し、シンガポールを経由して日本の特定目的会社(TMK)などに投資する手法を用います。これにより、当該不動産から得られる配当をシンガポールの会社経由とすることで税金を軽減する、いわゆる「二重減免」の恩恵を受けることができます。これは倶知安町やニセコ町では以前から常套手段として確立されているやり方です。

広がる外国資本の投資先:データセンターや物流センターへ

外国資本による土地買収の動きは、北海道のような観光地や自然豊かな地域にとどまりません。平野氏によると、現在日本ではデータセンターや物流センターの用地買収が活発に行われており、ここにもシンガポール経由の中国資本が流入している現状が明らかになっています。日本のインフラを支える重要な施設の用地まで、外国資本の影響が及んでいることは、日本経済や安全保障の観点からも無視できない問題と言えるでしょう。

結論

農林水産省による外国資本の土地買収調査結果の公表遅延と、その数字が示す「わずかな割合」は、日本の国土買収の実態を正確に反映していない可能性があります。特に専門家が指摘するように、実際の買収面積は公表値を大きく上回る可能性があり、その背後には租税回避を目的とした複雑な金融スキーム、そして中国系資本の存在が色濃く見られます。北海道の森林や農地、さらにはデータセンターや物流センター用地といった戦略的な土地への投資が増加している現状は、日本の経済、社会、そして安全保障に長期的な影響を及ぼす可能性があります。今後、政府にはより透明性の高い情報公開と、実態に即した土地買収規制の強化が求められるでしょう。

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