ブラジル大統領、トランプ氏の関税示唆を強く非難 BRICS独立路線を強調

ブラジルのルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ大統領は木曜夜、南半球の大国が集まるBRICSが、貿易関係強化に向けたより独立した仕組みについて議論を続けると述べました。この発言は、ドナルド・トランプ前米大統領がブラジルの全輸出製品に50%の関税を課すと発表したことを受け、米国との間で緊張が高まる中で、テレビ局のインタビューの中で行われました。ルーラ大統領は、BRICSの重要性と、米国の一方的な措置に対するブラジルの立場を明確にしました。

BRICSの独立性と脱ドル化への言及

TVグローボ局のインタビューに応じたルーラ大統領は、「BRICSは世界人口の半分、世界GDPの約30%を占めるフォーラムです。G20には(ブラジルを含む)10カ国のBRICS加盟国と、米国を代表するトランプ氏も参加しています」と述べ、BRICSの国際的な影響力を強調しました。「私たちは“北”に従属することにうんざりしています。政策の独立性を保ち、より自由な貿易を望んでいます。そして物事は良い方向に進んでいます。私たちは独自の通貨を持つこと、あるいはドルを使わずに各国の通貨を使って貿易を行うことの可能性についても議論を続けています」と述べ、BRICS内での経済的な独立追求と脱ドル化への動きを示唆しました。

トランプ氏の言動はBRICSの存在感への不満

TVヘコール局のインタビューでは、ブラジルに対するトランプ氏の言動は、BRICSが世界で存在感を確立しつつあることに対する不満の表れであるとの見方を示しました。ルーラ大統領は、「私はベネズエラ、ボリビア、チリ、スウェーデン、欧州連合、中国との貿易関係を維持するためにドルを買う義務はありません。私たちはそれぞれの自国通貨で行うことができるのです」と述べ、自国通貨や他国通貨での貿易の利点を強調しました。「なぜ私が、自分でコントロールできないドルの準備をする義務があるのでしょう? ドルを製造する機械を持っているのはアメリカ合衆国であって、私たちではありません」と述べ、ドル基軸通貨体制への疑問を呈しました。

ブラジル連邦共和国大統領 ルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ氏。BRICSの役割や貿易独立性について発言。ブラジル連邦共和国大統領 ルイス・イナーシオ・ルーラ・ダ・シウヴァ氏。BRICSの役割や貿易独立性について発言。

一方的な攻撃ではなく交渉の場で

ルーラ大統領は、いかなる意見の相違も、貿易や各国の主権を攻撃するのではなく、交渉のテーブルで議論されるべきだと強く主張しました。「もし彼(トランプ氏)が意見の相違を抱いているのなら、G20会議でその問題を取り上げ、文明的に議論を行い、我々を説得し、論議するのが正しい道です。彼がまるで他の人々の主人であるかのように振舞うことはあってはなりません」と述べ、トランプ氏の一方的な態度を批判しました。

無礼な態度への強い反発とブラジルの対応

さらにルーラ大統領は、現時点ではトランプ氏に電話するつもりはなく、新たな市場の開放によってブラジルの生産部門を守るために立ち上がると説明しました。米国のアプローチのトーンは失礼であり、受け入れ難いとも述べました。「彼は、例えば、ブラジルに電話をして、どのような行動を取るつもりかを伝えることもできたはずです。彼は一切の手紙も送っておらず、私たちも受け取っていません。彼は、全く経緯を欠いた態度で、彼のサイトで発表したのです。それは彼が誰に対してもとる態度です。そして私は、このような無礼な態度を受け入れる義務はありません。国家元首間の関係においても、人としての関係においても、です」と述べ、トランプ氏のコミュニケーション手法への強い不快感を表明しました。

まとめ

ルーラ大統領は、トランプ前米大統領によるブラジルへの関税示唆に対し、強い言葉で非難し、BRICSを通じた貿易関係の独立性追求と脱ドル化の議論が進んでいることを明らかにしました。また、トランプ氏の一方的なやり方を「無礼」であると批判し、ブラジルは新たな市場を開拓することで自国の生産部門を守るという方針を示しました。今回の発言は、BRICSの重要性の高まりと、グローバル・サウスが独自の経済圏を形成しようとする動きを改めて浮き彫りにしました。

(記事提供/Agencia Brasil、構成/麻生雅人)